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補聴器をやめた件

 補聴器には、10年以上お世話になっていたけど、夏が始まる前に補聴器を装着するのをやめた。もう、必要無いというか、私の耳が補聴器の力を借りても音を聴き取ることができなくなってしまったから。

 今年の春頃までは、言葉の理解は無理にしても、人の声はきこえていたし、誰の声かもわかっていた。外出のときは、救急車のサイレンとかがきこえるので、補聴器は使い続けてはいた。

 しかし、夏が近づくにつれ、自分でもきこえが悪くなっていることを感じるようになっていた。

 最終的に私がお世話になっていた補聴器は、販売店の人から、「国内外を問わず他のメーカーさんも含めて、これ以上大きな音を出せる補聴器はありません」と言われていた。そしてその補聴器でできるうかぎり、正常といえる範囲で最大に音を大きくチューニングをしてもらっていた。

 それ故、ハウリングも起こしやすかった。

 イヤーモールド(所謂イヤホン)をきちんと耳穴にセットしないと、すぐにハウリングを起こした。ハウリングの音は、耳が正常な人にとっては、人にもよるけど、かなり不快な音で、家族によれば、音量も結構大きかったらしい。

 にもかかわらず、自分の耳元で大きなハウリングを起こしているその音さえいつのまにかきこえなくなっていた。一年前までは、きこえていたのに・・・。

 梅雨明け前のある日のこと、ほぼ一日外出して帰宅したとたん、2階に居た家族が、まだ玄関にいる私に「ハウリングてる!凄い音!」と指摘された。口の動きと、仕草で何を言わんとしているのかがすぐにわかった。

 でも、私には何もきこえない。

 慌ててイヤーモールドを耳穴に押し込み直すと、家族からオーケーサインが出た。一体、いつからハウリングを起こしていたのだろうか?

 電車に乗っていたとき、隣に座っていた人は煩くなかったのか?駅から家まで歩く間、すれ違った人は、煩くなかったのか?約1年前の、苦い経験をも思い出し、考えを巡らせてしまった。

 言葉をきき取ることが出来なくても、緊急時にサイレンとかがきこえるように、ということで補聴器を使い続けていたのだが・・・、気がつくと、耳元の大きなハウリングの音が、パトカーや消防車のサイレンの音も、聞こえなくなっていた。

 ということで、補聴器を使うのをやめた。

 梅雨が明け、とんでもなく暑い夏が始まった。それでも今年の夏の私の耳穴は、久々に汗から開放され、すっきりスースーしている。














 

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