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みむら君が結婚した


みむら君が結婚した。 御年25歳。令和では稀にみる超早早早早結婚。

みむら君とはゼミの同期で、ゼミの中で一番仲が良かった。 「仲が良い」というのは少し表現が違うかもしれない。一番感覚が似ていた。似たもの同士群れて嫌いな人の悪口をコソコソ言い合うような仲だったように思う。

 「感覚が似ている」奴が結婚をした。しかも25歳で。 確かに彼は2年生からずっと付き合っている彼女がいたし、それが順当に続いていけば結婚することは容易に想像できる。

 ただ、彼は「こちら側」の人間だと思っていた節があったのだ。 

「こちら側」というのは、人生を遠回りする側だ。些細な事が気になってそれを見過ごせなくて人生を一時停止したりする側だ。「白黒つけること」や「素直さ」や「正直さ」を優先してしまう側だ。

 彼は一定程度の社会における義務を果たし、決断すべき時は逃げずに決断をし、多少問題があっても神経質に取り合わず着々と人生を進めていく側だったのだ。忘れていた。 にしても、結婚。

 私は選択肢が狭まっていくことが本当に怖い。なるべく道を確保したいタイプだ。何かを一つに絞るときはものすごく神経を使うし、ひどい時は足がすくむ。たいていの場合プランAがダメだった時のためにプランBも用意するし、プランAとBどっちを先に実行すべきが迷ってその間に人生に疲れて自殺するタイプだ。

 彼は1つを選んで、実行した。 しかもそれを全く報告してこない。涼しい顔で周りが気づかないうちに静かにやる。いっつもそう。何をするにしたって騒ぎ立てない。 1年前までティンダーをやっていた男だって6年間付き合っている彼女と普通に結婚する。そういうもんらしい。

 彼の言い分としては、同棲をすると選択肢が2つに絞られる。「結婚する」か「別れる」かだ。 彼はティンダーをやりながらも、ちゃんと彼女との信頼関係や「お互いお互いしかないよね」という関係を築き上げて2つのうちの1つに絞った。そういうことができる人間である。

 完全にひれ伏している。お前の勝ちだ。 もはやここで言っている勝ち負けは「結婚」についてではない。なんやかんや決断をし実行ができるかどうかの話だ。

 「一番感覚が似ている」人との圧倒的違いを見せつけられてしまった。彼は少しのずれや理不尽やモヤモヤは一旦置いておいて、のらりくらりと人との関係性を積み上げ、決めるべきところでちゃんと決められる人だった。そんなモヤモヤをいちいち取り上げて目くじらを立てていたら人生が進まないし、それでいちいち周りの人間を排除していったら積み上がるものがない。

似ている所が多くて、勝手に親近感を抱いていた相手に思いっきり差をみせつけられ、とにかく感服しているのである。


 おめでとうみむら君。心から祝福します。

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