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ハチドリのひとしずく

恥ずかしながら最近まで知らなかった、南米に伝わるお話に、「ハチドリのひとしずく」というものがあります。

非常に短いお話ですが、まずは内容から。

森が燃えていました
森の生きものたちはわれ先にと逃げていきました
でもクリキンディという名の
ハチドリだけはいったりきたり
口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは
火の上に落としていきます
動物たちがそれを見て
「そんなことをして いったい何になるんだ」
といって笑います
クリキンディはこう答えました

「私は、私にできることをしているだけ」

「ハチドリのひとしずく」辻 信一監修 光文社刊2005年

森林火災という動物たちからするとどうすることもできない事態に直面し、多くの動物はただただ身の安全のために逃げ惑う中、ハチドリだけはなんとか火を消すために懸命に消火活動にあたるというお話です。

ハチドリは非常に変わった鳥で、鳥でありながら花の密などを主食としています。そして何より世界で最も小さい鳥として有名で、体長は2-10cm程度、体重は2-20gというサイズ感です。人間の手の大きさとの比較感でその大きさがわかると思います。

ハチドリの大きさ

こんな小さなハチドリの、くちばしで運べる程度の水分量というのは森林火災を消化するには全く持って足りておらず、まさに「焼け石に水」というのが状況を見守る多くの動物の感想です。

ただ、ハチドリだけはどんなに徒労に見える状況においても、「私は、私にできることをしているだけ」と、信念を持って消火活動を続けます。

前回紹介したアームストロングの名言にも通じるところがありますが、どんなに小さな規模感でも、動き出すことに意味があり、少し拡大解釈ですが、その行動こそが世界を変えていく、という内容を暗示している気がします。

サステナビリティの文脈で何度か引用されているこの物語ですが、地球環境改善という途方もない規模のプロジェクトに対して、一人ひとりの人間の行動は無視できるほど小さいものですが、一方でその行動が積み重ならないと何も生まれません。

こうした行動は、特に動き始めは批判や嘲笑とセットです。冒頭のお話の動物たちの言動がそれを表しています。この批判や嘲笑を乗り越え、どうやって自分が信じる道を進むのか、というのが多くの人にとって課題なのではないかと思います。

こんなことを考えていると、大好きなジブリ映画「耳をすませば」の主人公の父親の言葉が思い出されます。

でもな、人と違う生き方はそれなりにしんどいぞ。 何が起きても誰のせいにも出来ないからね。  映画「耳をすませば」月島靖也

「耳をすませば」より

人と違うことをするというのは、瞬間的には非常に勇気とパワーが要る行動です。そして、失敗しても誰も助けてくれないように思えます。

ただ、それを乗り越えた先にある世界は、いまこの瞬間には絶対に見えない景色なので、ハチドリに見習って、いま私にできることをやっていきます。

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