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おーい、まりりんガンだってよ。④

兎に角生涯で経験した最凶最悪の腸の大運動会に耐えたのも「これさえ終われば解放される。」と云う全く根拠の無い理由からでした。
病院に着き術着に着替えて検査台に横たわると後は麻酔をされてるので痛みを感じる事は無く、時折「くりゅっ」みたいな感じの抵抗はポリープを取ってるんだなと何となく解る感じ。
そのまま病室に運ばれて「ここでお休みください。」と告げられ安堵と共にぼんやりしていると先程の大腸カメラの医師と件のS先生登場。
「お疲れさん。(にこにこ)」
「あ、どうもお世話になりまして…。」
この時点で私はもう悪いとこは無くなったと大いなる誤解をしていたのです。
「ポリープね、数個取ってもらったわ、僕の経験上多分良性だけど組織検査返って来るまで分からない。それとね。」
「はい。」
「丁度痛いって言ってた部分に近接している大腸にあまり見た目の良くないのが有った。これも組織検査出してるけど早く取った方がいいね。」
「取った方が?今日取っていただいたんじゃないんですか?」
「カメラでちょいちょいと取り除けるレベルじゃないんだよ。腹腔鏡手術をしなけりゃね。お腹に何箇所か穴を開けて手術する。」
この言葉を聞いてショックとも悲しみとも絶望とも怒りとも何とも言えない感情が湧いてきて、無理矢理言葉にしたとしたら「はぁ?あんなしんどいのに耐えて何も変わってないのかよ!」みたいな。
さすがに飲み込んだけど。

それから一泊の予定だったのに入院を更に追加されレントゲンだCTスキャンだ造影検査だと検査漬けの日々。
血液なんて何本抜かれたか忘れるくらい。
ただ執刀はS先生がやってくれておまけにこの先生は腹腔鏡手術に関しては業界紙に何度も紹介されている名医で頼みに行っても中々診てももらえない医師らしい。
それだけでも幸運だよ自分!と苛立つ自分を自分でなだめている内に手術日程が決まり、当日の持ち物等の説明を受け一旦帰宅する事に。
入院予定日数は約2週間、貯まった有休で何とかなるかなと考えながら連絡入れなきゃならん所を頭でピックアップしてると病室にS先生。
「画像をね、全部精査したのよ。そしたらさ肝臓に何か有るんだわ。ただ水が溜ってるだけかも知れんし遠隔転移かも知れん。見てみないと分からない。」
転移?ちょっとそれ死刑判決に聞こえるんですけど。
「あ、そんなに深刻な顔しないで、これだから。」とパソコンに映し出された画像を指差す。
「え?どれです?」「これ。」「え???」画像を拡大して「ここだよ。」「どこです?」そんなやり取りを繰り返してやっと確認出来たのは針で突いた様な小さな小さな影。
「放射線科は何も言ってないけどさ、僕が気になるんよ。ただ、大腸と肝臓となると腹腔鏡手術は無理だな。開腹手術になっちゃうよ。」
なっちゃうよ…なんて簡単に言わないでくれますかね?
ただでさえ恐ろしい台詞を聞いた後に開腹手術ですって?
身体にメスなんて入れた事ないんですけど?

そして旦那が呼ばれ説明を聞き入院予定が2週間だったのが3週間に追加され当日まで約1週間自宅待機となりました。

後で落ち着いてから色々聞いてみると病変が見つかってから検査や入院や手術やらが物凄くテンポ早く決まってる。
このご時世いくら早く処置した方がいいとは言えこんなに早く病院に迎えられる事はまず無いらしくて。
S先生がなんで私に興味を持ったのかは知らないけど望んでも中々得られない状況だと(無理矢理ながら)感謝して入院までの落ち着かない日々を過ごす事になるのです。


続く

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