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「……さん。…さん!」

ん?誰か呼んでる?
何か寒いな…と考えながら目を開けると数人のナースが私に病衣を着せてる最中で。

「体温34℃代です!」「電気毛布!」「はい!」
へえ〜そりゃ大変だね〜なんて思いながらもう一度目を開けると「分かりますか?聞こえてますか?お身体冷えてるんで暖めますね。」
「はい…。」自分の手足が鉛みたいに重いし毛布気持ちいいなぁ。
「7時間掛かりました。よく頑張りましたね!」
いや、私は寝てただけだし。頑張ったのは先生達でしょ?
あ〜でも何か言わなきゃな〜と口を開きかけた瞬間何故か左肩に激痛。
当然出てきた言葉は「痛たたたたたっ!痛い!痛い!」それを聞いてその場に居たナース達は毛布を捲り一斉に私のお腹に注目するのですが。

「違っ!違います。肩が…左肩が痛い。」それを聞いてナース達は「なーんだ、肩かよ。」みたいな態度になった訳なのですが、とにかく肩が痛い。
回復室に寝かされてる間も「肩が痛い。」しか考えられない。

まぁ、後から分かった話なんですけど台に私の腕を固定した時にほんの少々無理な姿勢になってしまった。
私に意識があれば微調整もしたんだろうけど全く意識の無い状態で若干とは言え無理な姿勢で固定して7時間。
結果肩の筋が悲鳴を上げたと。

幸か不幸か「肩が痛い。」しか考えられず腹の痛みも喉の渇きも(当然ながらその夜は絶飲食)気にならずひたすら「肩を冷やしてくれ、鎮痛剤くれ、湿布貼ってくれ。」と懇願し続けた次第です。

脇腹には4本ドレンホースが刺さって廃液されており腕には相変わらずでっかい袋の点滴。
当然ながらトイレも行けないのでそれ系の管も入り全身管だらけで冷静に見たら気が滅入ったかも知れないけど。
兎にも角にも「肩が痛い。」それしか考えられず寝入ってしまったのか気絶しちゃったのかは分かりませんが。
その夜はグラス一杯2000円の水を買って飲もうとしてる夢を見ました。
口を付けてグラスを傾けようとした瞬間に目が覚めて。
肩の痛みに渇きと腹(でっかいガーゼに覆われていて状態は見えない)の痛みが加わってどんな人格者でも凶暴になりそうな気分でしたよ。

辛うじて動く腕を伸ばしてスマホを取り「目が覚めた。生きてるようだ。」と旦那にラインを送り、3日連続夜勤をした時の疲労感に似た倦怠感ともう震源地がどこなのか分からん痛みを感じながら鎮痛剤もらおうとナースコールを捜したら…有りました。
起き上がって手を伸ばさなければ届かない位置に。
わざとか?うっかりか?
いずれにせよ今の状態ではボタンには触れる事も無理だし…どうしたものか?

自分の胸元に心電図が繋がっているのが見えたので派手にアラートが鳴りそうなのを剥がしてやりました。
当然顔色変えてすっ飛んで来るナースと初めて見る顔のドクター。
「すいませ〜ん。痛くてもがいたら外れちゃいまして。(大嘘)そんくらい痛くて、鎮痛剤いただけませんか?ナースコールどこに有るのか見当たらなくて。(これも大嘘)」
すぐにドクターは何とかしてくれましたし腹腔内に関しては背中に刺さった針から鎮痛剤が出てるらしいです。(効いてないけど)

そして回復室の外で患者の手の届かない位置にナースコールを置いてた事をドクターから注意する声が聞こえ。
性格悪いな自分…と思いながら目を閉じました。

だって私はどうすればナースステーションに気付かせられるか知ってますけど普通の人は知らないでしょ?
朝に誰か来るまで脂汗かいて痛みに耐えるなんて術後の病人にさせちゃダメっしょ。

良い子は真似しないでくださいね。
そして看護サイドの皆さん、例え本人に意識が無くてもコールボタンは起き上がらなくても届く位置に置いてやってください。
経験を以て切に願います。


続く

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