取扱点数1800万点以上、年20%成長を支えるMonotaROサプライチェーン!データドリブンに進化し続ける挑戦
※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職等は取材時点のものを掲載しております。
モノタロウの仕入れから出荷までのサプライチェーンの最適化を図っているのが、当社のSCMチーム。今回はビジネス成長に伴い変化し続けるマーケットでモノタロウ流のサプライチェーン構築に挑むSCMチームのプロジェクトストーリーをお届けします。
2年で取り扱い商品点数40%増、成長し続けるサプライチェーン
ーモノタロウのサプライチェーンについて、教えてください。
田村さん:
当社の取扱商品点数は、2017年の1300万点数から、2019年時点で1800万点数とわずか2年で40%増え、売上成長に伴い物流量も増えています。増加する物流量を支える為、2021年に茨城県に、2022年に兵庫県に新センターを今後新設予定です。製造業をはじめに国内拠点を閉鎖するなどサプライチェーンへの投資は縮小していると感じていますが、当社は物流拠点・システム開発をはじめサプライチェーンへ積極的に投資を行っています。
SCM企画チームには私含め現在6名が在籍し、大きくふたつのミッションに取り組んでいます。ひとつめは、在庫計画です。当社は2020年6月現在、関東は茨城県と関西は兵庫県に物流拠点を直接運営し、全取扱1800万商品のうちの45万点を在庫しています。当社が扱う商品は在庫の量・大きさ・性質が多岐にわたり、商品の中にはお客様がたまにしか購入しないものもあります。倉庫毎の在庫可能な商材の体積・属性の制限を加味しながら、試行錯誤し在庫計画を組んでいます。
▼茨城県 笠間ディストリビューションセンター
ふたつめは、海外取引先との新たな輸送ルート開拓、物流改善を含むサプライチェーンの強化・高度化です。当社は現在、より安く高品質の商品をお客様にお届けするべく、プライベートブランド商品の拡充に力を入れています。約500社の海外仕入先、1万点程の膨大なプライベートブランド商品を遅延なく適切な物量にて受け入れる為、サプライヤーとの調整を行っています。
▼プライベートブランド商品
野崎さん:
実はSCMチームが出来たのは昨年で、それまでは物流や商品といった部門それぞれにサプライチェーン機能が分かれていました。拠点が増え、物量も増え、やることが高度化してきたタイミングで、より柔軟性を持ってサプライチェーンを改善していく事を目的に在庫計画機能と輸入機能を併せ持った現在のSCMチームが立ち上がりました。
江さん:
チームとして独立した事でサプライヤーとの調整もハンドリングしやすくなりましたし、ひとつのグループに在庫計画機能と輸入機能があることで出来ることも広がりましたよね。
バイコンの分割発注プロジェクト
ー現在取り組まれているプロジェクトについて、お話を聞かせてください。
田村さん:
中国サプライヤーからの輸送効率化に向けた新しい仕組み導入を進めています。これまでは最低発注数量を茨城・兵庫の各拠点に入荷させる方法しか取れず、需要に対し過剰在庫となり、保管コスト・スペースが問題となっていました。そこで、最低発注数量を茨城・兵庫で分割して入荷できないかと考え、当プロジェクトが動き出しました。
江さん:
当社が保有する中国3拠点の※バイコンに対し、2018年に青島、2019年に深圳に仕組みの導入を完了し、そのノウハウを元に今年からは上海への導入を始めています。
上海が抱えるサプライヤー数・商品数は膨大で、これまでとは規模感が全く違います。データサイエンティストと共働しながらこれまで手作業で行っていた分割発注のロジックのシステム化、自動化に取り組んでいます。
※バイコン:バイヤーズコンソリデーション。複数のサプライヤーの貨物を1か所の倉庫に集め、ひとつのコンテナにまとめて海外へ輸送する手段のこと
野崎さん:
同じ中国でも地域によって商習慣が全く違うので、バイコン導入にあたってサプライヤーさんへ交渉していく過程が大変ですよね。
江さん:
そうですね、以前の進め方や基準が通用しないので、都度粘り強く交渉しています。
ただ、こうした活動を続ける意義は感じています。別のプロジェクトですが、混載運賃費の適正化に向けて、200社以上のサプライヤーさんに交渉を行ったことがあります。当社のバイヤーの方も巻き込んで交渉を重ね、結果会社としても大幅なコストカットが出来ました。独りでは成し遂げられなかったので、当社の部門を越えて同じ方向に向かって協力する風土を感じ、達成感がありましたね!
在庫計画再編プロジェクト
田村さん:
これまでは売れ筋商品をどんどん在庫すれば良いという考えで在庫化を進めていましたが、倉庫数が増え、またサプライヤーさんとより深い情報連携が可能になったことで、最適な在庫配置のあり方も変化してきており、在庫基準の見直しをしています。
野崎さん:
商品によっては、商品毎の売れる季節やトレンドがありますので、単純に在庫するのでなく売れる時期に在庫し、売れない時期は在庫しないといったコントロールをするようにしています。商品一つ一つと深く関わり、この商品の在庫を適正化できないか?という問いに対してこれまでのデータに向き合いロジックを考え、実際に在庫し問題があれば改善と、一つ一つ解き明かし、適正在庫を見出せたときは嬉しいですね。
また、現在国内配送の効率化に向けた取組みも行っています。各物流拠点毎に在庫している商品のラインナップが異なるため、例えばお客様から注文いただいたふたつの商品が、兵庫・茨城の拠点それぞれに在庫されていれば、それぞれの物流拠点から配送を行うことになります。
お客様にとっても受取の手間となりますし、当社としてもそれぞれに配送費用が生じるため、コストアップに繋がっています。
そこで、よく売れる商品については両拠点で共通して在庫するような基準を作り、需要が変動する中でも、適切な在庫配置になるように日々メンテナンスしています。
配送業者へ支払う配送料も上昇する傾向にありますので、この取り組みによって配送費用の削減を目指していくことが目標です。
データに基づく高度なサプライチェーンを実現する
ーモノタロウ流のサプライチェーンとは?
田村さん:
必要なものを必要な時に必要なところに必要な量だけ在庫する、というサプライチェーンの基本をモノタロウ流のやり方で実現しようとしています。
当社の強みは売上やモノの流れといったデータをリアルタイムで入手出来ることであり、これまでもデータドリブンに仕入れや在庫化のロジックを適正化してきました。
今後は、販売需要のトレンドを元に、機械学習で予測した数量を自動的に発注するなど、更に高度なサプライチェーンの構築を実現しようとしています。
野崎さん:
販売需要を分析する機能が同部署内にあるのは強いですよね。販売分析グループには、サプライチェーン分析に特化したデータサイエンティストがおり、機械学習などの手法を用いて高度な分析を行っています。販売分析グループの需要予測に、私たち現場目線の提案が組み合わさることで、販売状況に合わせた在庫の最適化を行うことが出来ています。
田村さん:
データが整備され、進化に前向きな文化がある中で、データ分析スキルが高まってくればもっと当社のサプライチェーンを高度化できる!と確信しています。その為、チームでSQLの勉強会を行うなどしてデータ分析スキルを高めていく取り組みも行っています。
江さん:
仕入れから販売といったモノタロウのビジネスフェーズ全体に関り、長期的な目線で最適化を実現している、唯一の組織がSCM企画チームです。最適なサプライチェーンの姿を模索し改善を繰り返して、モノタロウ流のサプライチェーンを進化させ続けたいと思っています。