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はたらく現場

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喪に関わるひとたち編(霊柩車の工場の職人さん、墓じまいを任される石屋さん、ホテルマンのように自宅のお葬式を取り仕切るひと、若い女性納棺師さん、きびきび祭壇の花を飾るひと、、、)
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#写真

個性ゆたか。さをり織の「工房もくもく」を訪ねてみた

写真撮影©朝山実  先日、福島県相馬市の工房もくもくを訪ねた。ここはハンデキャップをもったひとたちが働く作業所で、所長の佐藤定広さんとは以前、浜田真理子さんが参加するというので出かけていった手づくりの音楽祭で知り合った。  音楽祭の主催者というので話をうかがうちに、おっとりした話し口調にひかれ、翌日時間があれば近くを案内してもらえないかと口にしていた。あとでカメラマンの山本さんから怒られた。ひとのよさに付け込んで、アッシーみたいにするのはよくない。被災地を見てまわりたい

ルディと、こまっちゃん。

「婦人公論 8/25」で「いまとぎのお葬式」の取材をしました。  訪れた場所のひとつは、生花祭壇に代えて、大きな「シルクスクリーン」を使った祭壇をメインに提案している葬儀社の倉庫。以前、別件で取材したときに「自宅に帰りたい」といわれながらも病院で亡くなられた故人のために、自宅の書斎を写真に撮り、それを映画館のスクリーンのように引き伸ばしてパネルに貼り付け、祭壇の棺の後ろのスペースに設置した。葬儀場での事例写真をみせてもらったことがありました。  まるでその部屋にいるかのよう

特殊なクルマを作っている工場を訪ねました⑷

霊柩車づくりから 何気にやる気を起こさせる 「8割ほめ」の極意を学ばせてもらいました 写真©山本倫子  中古車を改造して「霊柩車」を作りだしている工場の見学ルポの最終回。茨城県にある工場を再訪問しました。  再び訪れることにしたのは、前回は日曜日で工員さんたちがお休みで、作業風景を撮影できなかったから。前回のときに見た小型バスの改造作業の進捗を見ておこうと思ったからです。

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特殊なクルマを作っている工場を訪ねました(3)

転職して始めた、霊柩車販売業 社長の前職は…… 写真©山本倫子  中古車を改造して霊柩車を製作販売している工場の見学ルポの3回目。引きつづき、ライフサポート・エイワの寺山和夫さんに話をうかがいます。  寺山さんは40代になってから霊柩車の販売に関わりはじめたそうです。 「もともとは歯科技工士で、入れ歯だとかインプラントの白い歯を作っていました」  寺山さんは昭和33年生まれ。22歳で歯科技工士となり、歯科医院勤務を経て自宅に仕事部屋をつくり、歯科医さんから注文を受

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特殊なクルマを作っている工場を訪ねました⑵

霊柩車は どうやって作られているの?  霊柩車は、トヨタとかイスズといった自動車会社が特注で作っているわけではなく、町工場が買い入れた新車や中古車を霊柩車仕様に改造して販売しているというところまでが前回のルポでかわったことです。  前回につづき、ライフサポート・エイワの寺山さんに話をうかがいました。  仕入れた中古車を補修し、普通に乗車できる段階にまで仕上げてから霊柩車へと改造していくのが工場での流れなのだと教えてもらいましたが、「霊柩車にしなくていいから、そのまま売って

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特殊なクルマを作っている工場を訪ねました(1)

「自分が手がけたものは、 見たらわかります」 写真©山本倫子 「基本は一台一台、イチからの作業なんですよね。だから、クルマを前にして、さぁ、どうしようかというところから入ります」  細身でがっちり体格の岩堀さんは、工場で「設計」担当をしている。作業中の車両の前で話してもらったが、すこし話を聞いただけでもクルマ好きが伝わってくる。ところでココではちょっと変わった自動車がつくられている。 「たとえば、作業の前にたまたまキャンピングカーの雑誌なんか見ていたとしたらイメージが

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「営業部長」のネコがいる鈑金工場

「コウジョウには朝礼とかラジオ体操があるけど、ないのがコウバなんです」  先日取材したライターのひとに教えてもらった。橋本愛喜さん。『トラックドライバーに言わせて』(新潮新書)というノンフィクションの本をだしたばかりの彼女自身が元トラックドライバーで、金型工作機械を研磨する工場を経営していた父親が倒れ、大学卒業直前に会社を継ぐことになった。  二十歳そこそこのお嬢だった彼女が突然社長の代役だといっても、父親を慕って集まった工員さん(ちょっとヤンチャ)たちがついてきてくれる

すごい!! 「お弔いの現場人」たち

「はたらくひと」というインタビュールポをしてきました。『お弔いの現場人 ルポ葬儀とその周辺を見にいく』(中央公論新社)のつづきみたいなもので、葬儀関連の情報サイトでの短期連載。  第1回は、エンバーマーさん。東京など都市圏の火葬場は混み合い葬儀まで日数があいたりする事情もあり近年要望が増えているという、ご遺体保存処置をおこなう専門職で、通常部外者は見ることのできない施術室にも入ることができました。  インタビューではあるのですが、「働く現場を見たい」と無理をいい、仕事の手

孫が任された「おばあちゃんのお葬式」

昔ながらの「自宅葬」のあるかたち 取材・撮影=朝山実 前回を読む☞https://note.mu/monomono117/n/n8b1136ad762e 「父のときも息子には一生懸命やってもらったんですけど、人数が多かったのでホールを借りてやったんです。でも、今回は母の希望でもあったんですよね」  2018年12月、埼玉県飯能市内のご葬儀に立ち会った。施行を任されたのは、鎌倉に拠点を置く「鎌倉自宅葬儀社」の馬場偲(しのぶ)さんだ。  亡くなられたのは偲さんの母方の「お

「自宅葬」という文化を推奨する、小さな葬儀社

取材・撮影=朝山実 「何もしなければ、始まらない。始めなければいいんです」  ここは鎌倉駅に近いビルの会議室。取材をはじめて1時間は経過していただろうか。「始めなければいい」ときっぱりと言い切る林さんは、「鎌倉自宅葬儀社」の立ち上げに際して事業コンセプトの設計を担ってきたパートナーだ。鎌倉まで取材に訪れたのは昨年秋だった。  鎌倉を拠点とする、鎌倉自宅葬儀社の設立は2016年。社名にあるように、自宅でのお葬式を提案する葬儀社だ。 「みなさん誤解しているのは、葬儀会社に電

キャッチボールしたい石屋

「40㌔ぐらいの重さかな。手で抱えて入れようとしたら、コツンとあてちゃったんです。下の部分ですけどね、当てたのは。そうしたら対角線上の上の部分が、パチン!」  松本高明さんの本業は、墓石の販売と設置だ。 ●前回「墓じまいの現場ルポ」を読む☞ココ 「ゲンバビト」という「墓石」に関わる仕事人を特集したテレビ番組を見た際のこと、いくつもの工程を経て完成された墓石を霊園に設置する。その場面に見入ってしまった。  炎天下にクレーンを用い、美術品のようにゆっくりゆっくり、墓石を慎重

「お墓じまい」を見学

「墓じまい」をすれば、要らなくなった墓石はどうなるのだろうか?石屋さんに訊いてみました。 「センセイ、あそこに見えるのがジョン万次郎のお墓です」  運転席の松本さんが、左手をちらりと見る。  ジョン万次郎?  助手席の編集者Fさんが、アメリカに渡ったひとですよ、という。すごいですねぇとカメラマンの山本さんが応じる。 「ああ、まんじろう……」  こたえはしたものの、車中の会話にひとりだけ入っていけずにいた。アメリカに渡ったのに、お墓がなんで東京都内の雑司ヶ谷にあるのか……。言