映画『フルートベール駅で』(あらすじと感想)|日常と隣合わせの惨劇
この映画はカリフォルニア州ヘイワード出身の22歳のオスカーグラントの人生の最後の日を描いてた実話です。
2020年5月25日に起きたジョージ・フロイド暴行死事件に通じる黒人差別を象徴する作品だと思います。
監督はライアン・クーグラー、主演はマイケル・B・ジョーダン。この作品の後、「クリード チャンプを継ぐ男」や「ブラックパンサー」等のエンターテイメント作品を手掛けるコンビの原点ともいえる作品ですので、ぜひ黒人差別への理解も兼ねてご鑑賞頂ければと思います。
1.あらすじ(ネタバレあり)
2009年1月1日、撮影直前の午前2時15分に、オークランドのフルーツベイルBART駅でオスカーグラントと彼の友人たちの実際の映像が拘留されているところから始まります。
グラントと彼のガールフレンド、ソフィーナがグラントの浮気について口論になる。
グラントは母親誕生日パーティーに出席した後、サンフランシスコで花火や新年の祝祭を見るためにBART電車に乗る。
帰りの電車でグラントが働いていた食料品店の顧客であるケイティはグラントを見かけ、彼の名前を呼ぶ。
元受刑者がグラントに気づき襲ってくるがBART警察に取り押さえられる。
事態の収拾ができなくなった警官たちは、何を思ったのかグラントを銃撃した。
グラントは直ちに病院へと運び込まれたが、そのまま帰らぬ人となった。
エンディングが流れた後、グラントの死後に起きた出来事が説明されます。
事件に関与した警官たちは解雇され、グラントを射殺した警官は業務上過失致死罪で有罪判決を受けた。また、彼は「テーザー(電気)銃と間違えて撃ってしまった」と語り、11ヶ月で出所したそうです。
2.感想
この映画は誰かを糾弾するためのものではなく淡々とオスカーグラントがその日に何をしていたか描いた作品である。
通常の映画であれば誰かを糾弾して、責任を追及するような作品にするかもしれない。スパイクリーの「ブラッククランズマン」やクエンティンタランティーノの「ジャンゴ」は、映画という媒体を使って監督の感情を爆発させている。
一方、本作品のライアン・クーグラー監督自身もこの駅の近くの住人であり、一人の市民としてオスカーグラントを描こうとしているということが分かる。
オスカーグラントには、奥さんがいて、4歳になる娘がいて、その日は母親の誕生日だった。
就職活動に苦しみ、恋人と喧嘩もする。
描かれているのは、ただ一人の若者。
その若者だ黒人というだけで、拘束され射殺されることになる。
普通の若者の日常が突然惨劇に代わるという物語の構成自体が、この作品で監督の訴えたいこと、黒人の人種差別問題の根深さが表現されていると思います。
このような恐怖が生活と隣り合わせにあるという異常な状況が、存在するということを知るという意味で、見るべき作品だと思います。
ちなみにビリーアイリッシュがGQ Japanのインタビューで、一番好きな映画は「フルートベール駅で」と答えています。
3.関連作品
①クリードチャンプを継ぐ男
ライアンクーグラーとマイケル・B・ジョーダンはこの作品の後、再びタッグを組みメジャー作品を成功させています。再びタッグを組むのは「クリード チャンプを継ぐ男」。
本作ではロッキーの後継者として、アポロ・クリードの遺児であるアドニス・クリードが、リングに立ちます。
ロッキーが自堕落な生活から抜け出したいというハングリー精神でのし上がったのに対して、チャンピオンの息子という生い立ちで、何不自由なく生活してきたクリード。
不自由がなくても何かに情熱を燃やさずにはいられないという、現代の若者の”夢”問題を描いた良作だと思います。
②ブラックパンサー
「ブラックパンサー」でマイケル B ジョーダンが演じるのは、主人公ブラックパンサーの敵であり、エリック・キルモンガー。最新のテクノロジーを持ちながらアフリカの奥地で隠れて暮らすワカンダ王国。そのテクノロジーを使って、世界に復讐するべきか、世界と共に歩むべきか、ナショナリズムとグローバリズムの台頭という現代の問題をアクションヒーロー映画に落とし込んだ素晴らしい作品だと思います。
2018年公開当時、全米歴代3位、世界歴代9位の興収という大ヒットをたたき出した「ブラックパンサー」。
こちらもぜひ!
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