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はじめよう自動搬送 – 台車を運ぶ便利な機械の選び方⑤

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AGV・AMR導入の障壁

前回、AGVが台車を牽引しながらきちんと走行するためにはアームのピンと固定輪が必要ということが分かりましたが、
実際の現場はそれらが揃っていないことが多く、他にも様々な障壁が存在します。
多くは全自在輪台車

今、日本中の物流で使用されているカゴ台車やドーリー台車の大半は全自在輪台車です。
牽引すると左右に振られ、下の図のようになってしまいます。

大量にある全ての台車を固定輪台車に変えることは難しいため、AGV・AMR導導入の大きな壁となっています。

【思うようにひっぱれない 台車の振れ】
・まっすぐひっぱっていても台車がどちらかに振れる
・カーブを曲がるときカーブの外側に大きく振れる
・床の勾配に沿って流れるように振れる
・床の段差や凹凸に引っ掛かって、傾いて戻れない

【振れの原因】
・カーブの遠心力
・床の悪さ(傾斜・凹凸・ざらざら・つるつる)
・キャスターの品質(経年劣化・整備不良)
・積載荷物の偏荷重

では、どのようにすればAGV・AMRで全自在輪台車を牽引することができるでしょうか。

【考えられる方法】
①振られないぐらい強い力のAGV
大きなモータ出力とその電源が必要。車幅も大きく、重くなる。

②潜り込んで持ち上げるAGV
低く、細いAGVサイズが必要。昇降させるリフターが必要。
全重を支え駆動する動力、電源が必要。

③固定輪を取付けて固定輪化
台車1台1台に取付ける作業が必要。床との摩擦力確保の重りや仕組みが必要。
アームが必要。

方法①・②は、AGVと台車を一体化させて搬送する方法です。AGVに積載したり、単体で走行する制御をそのまま利用できるメリットがあります。
デメリットとして、大きな動力が必要だったり、機械を小型化又は大型化する必要があり、専用機になる必要がある。もちろん、価格もそれに伴います。

方法③は、台車運用の中で補助機能を台車側に付加する方法です。運用の手間はかかりますが、AGVの選択自由度が高い方法です。

現場の台車にアームがない

車輪の障壁の他に、現場の台車にアームがついていないことも、AGV・AMR導入の壁となっています。
全ての台車にアームを付けることはできませんが、導入のためにはアームが欲しいです。

アームは台車をただ一台ずつ運ぶためだけでなく、固定輪とアームのピンを組み合わせると列車のように連結しても搬送することが可能です。
一度にたくさんの台車が搬送でき効率がUPします。


ただし、安定して運ぶためには以下の条件をクリアしていなければならないため注意が必要です。

  • アームとピンがそれぞれの台車にあること

  • 全ての台車が固定輪台車であること

  • AGVのパワーが十分にあること

  • カーブの内側に台車が入ってくるので広くコース取りができること

台車が連結されるほどカーブの内側を通ります。これが内輪差です。
柱などにぶつからないようにコースを作る必要があります

キャスターやアームの問題だけでなく、他にも障壁は存在します。
例えば、同じようで微妙に違う台車が複数存在するためにAGV・AMRに上手く取り付けられないことがあります。
また、固定輪台車でもAGV・AMRによる牽引が難しい台車があります。

同じようで微妙に違う現場の台車

台車が作られた時代や製造ロットにより改善を加えていたり、また製造方法や地域にも仕上がりに差異があったりと、同じ台車に見えても微妙なバラツキが存在しています。

【よくある違い】
・溶接の個所が違う
・パイプ格子の数が違う
・部品の取付方法や方向が違う
・キャスターメーカーが違う
・フレーム高さが数mm違う

AGV・AMRと台車を連結する部分を設計・製作する際には、複数台の台車を調査・採寸することをお勧めしています。

6輪天秤台車(スリムカート)の難しさ

天秤台車は中央に固定輪が付いている6輪の固定輪台車です。前後のキャスターより中央の固定輪が床に深くあたるように工夫され、前後どちらかのキャスターしか床に接触しません。
これにより、固定輪を中心に回転旋回することができる便利な台車です。

走行中はその名前の通り天板の両端が天秤のように上下に揺れます。
この上下に揺れる動きや力に馴染みながら自動搬送することは非常に難しく、天板を固定したり連結する必要がありますが、ガッチリ固定してしまうとAGVに大きな負荷を与え故障の原因となります。
AGV・AMR選定の際は天板の上下動作にも留意する必要があります。

その他に考慮すべきこと

コースの段差や傾斜

AGV・AMRと台車を固定アームで連結してしまうと、下の図のように傾斜の影響を受けてしまいます。段差でも同様のことが起きてしまうでしょう。
アームには、床の状態に合わせて変化する柔軟性が必要です。

AGV・AMRのトータル搬送能力

走っている時間だけでAGV・AMRの処理(搬送)能力は算出できません。

  • 取付け

  • 搬送

  • 取外し

  • 荷を取りに戻る移動

  • 充電

  • 操作

これら全てのスピードをトータルで考慮したもがAGV・AMRの搬送能力です。
特に台車の取付けと取外しは搬送の度に発生するため、そのスピードが効率に大きく影響します。

考慮すべきことまとめ

ここまでの内容をまとめると、AGV・AMRを導入して現場の台車を牽引するには、様々なことを考慮しなければならないと分かります。

・全自在輪台車はスムーズに牽引できない(アームのピンと固定輪が必要)
・現場の台車は全自在輪台車が多い
・台車にはアームが付いていない
・カーブでは内輪差が生じる
・振れの原因は カーブ、床、キャスター
・全自在輪台車を運ぶには、特殊なAGVが必要
・現場の台車には微妙な違いがある
・上下の揺れを吸収する取付が必要
・段差、傾斜で連結部に負荷がかかる
・取付け、取外しを含めた時間がトータル搬送能力

また、これ以外にもそれぞれ現場特有の悩みや特徴があり、それらを解決しながら自動搬送を進めていく事はとても骨が折れることでしょう。

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次回は、いよいよAGV・AMRの選定ですが、複雑な内容となるためなかなか執筆が進んでおりません。。。どうか気長にお待ちください。

(AGVの制御の方法についても、最適な運用方法について提案をしております。
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