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土龍山事件

 日本人移民用地買収に対し、1934年3月に吉林省依蘭県土龍山で発生した農民武装蜂起。別名 依蘭事件。
 1934年1月、関東軍は吉林省東北部で100万町歩の移民用地買収に着手、これに対し依蘭県八虎力付近の住民は保董兼自衛団長 謝文東のもとに集結、東北民衆自衛軍を組織し、3月9日土龍山警察署を武装解除、10日、第六三連隊長飯塚朝吾らを殺害、その後2ヵ月にわたって第一次、第二次武装移民団を攻撃した。背景には土地買収のほか、民間銃器回収や種痘への不満があった。事件後、買収工作は満洲国政府が引き継ぎ、軍は武装討伐を行ったが、1936年9月、謝らは中国共産党(中共)系の東北抗日聯軍に合流、第八軍を編成した。

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 事件は初期の満洲移民政策に見直しを迫るとともに、満洲における抗日民族統一戦線の契機になった。謝は1939年3月に帰順、戦後は国民党に就いて中共軍と対峙、1946年末に捕えられ斬首刑。土龍山鎮に二つの抗日暴動記念碑が建てられている。

[参考文献]
山田豪一「満州における反満抗日運動と農業移民」(『歴史評論』一四二・一四三・一四五・一四六、1962年)
小都晶子「「満洲国」初期における日本人移民用地の取得と中国東北地域社会——「三江省」樺川県を事例として」(西村成雄・田中仁編『中華民国の制度変容と東アジア地域秩序』所収、汲古書院、2008年)

—— 二〇世紀満洲歴史事典(小都晶子)

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