トドリ
あんたの手は白いやね。
そう言ってやると家事もしない悪い手だァねとあの女が答えるので、そんなこと言いたいんじゃねえよ姐さん勘弁してくんなイ、と声をその華奢な肩にしなだれかけるつもりで弁解する。果たしてあの女は肩越しに振り向き、いいのサ、と殊勝なことを言う。
いいんだヨ、本当のことさァね。
でもあんたが帯を締めるとこを見るのがおれァ世界で一チ番好きだよと、声に出す代わりに蚊遣りの線香に火を入れる。姐さん泣いてるのかい。なんでもない振りをして問いかけるとあたしァ涙なんてもんはおっ母さんのお腹ン中ァ忘れてきたんさネ、と言った。だから
「だから泣くのァお止しよ、」
見透かされることは心地いい。白い手の哀しい女に限る。
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