あの山を

あの山を越えていくにはどうすればいいのだろうか

あの谷をまっすぐに落ちて底につけばいいのだろうか

あの草木を踏みしめて崖を登ればいいのだろうか

あの根を掴んで体を引き上げればいいのだろうか

あの土に爪を食い込ませて獣のように

土の下にいるみみずなどが

爪の下で裂けていくかもしれない

あの山を越えていくには

あの星を

あの星を

目印にして

ただまっすぐに落ちて登ればいいだけだったような気がする

あの山を越えていくには

獣のようになって

這い蹲り

それをみじめだと思い

たくさんの星星に

背中を嗤われ

みみずなどの

罪もないもののいのちを奪って

あの山を越えていく頃には

もう目的などはどうでもよくなっていて

あの山を越えていった先に

おれはなにを望んでいたのかが

もうわからなくなっていく

泥にまみれたてのひらの

新鮮な土のにおいが

あの山を越えてきたのだと

おれに言い聞かす

あのやまをこえてきただけのおとこだったのだと

あのほしぼしがおれをわらう

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