フードファイティンガー爆食!! そのじゅう
青山竜舌焼中学校(あおやまりゅうたんしょうちゅうがっこう)三年 部長の反梟武 蚩尤(そさらぶ しゆう)との勝負を控えた爆食院 饕餮(ばくしょくいん とうてつ)は三回戦後に見た桜餅 大納言 猿田彦(さくらもち だいなごん さるたひこ)の言葉と表情が忘れられなかった。
「予選準決勝まであと30分だってさ、爆食院饕餮君」
案内の生徒とは似つかわしくない声に爆食院 饕餮は違和感を覚える。下げていた首を上げると、そこには対戦相手の反梟武 蚩尤が立っていた。反梟武 蚩尤の体格は山俵 竜とは全く違う。威厳もなく、細く、にっと笑った口から覗く歯は並びも悪い。
「どしたん?あの竜殺しの饕餮君がそんなへこんじゃってもう」
図々しくベンチの隣へ大股開いて腰かけた反梟武 蚩尤は、一番話題に出して欲しくない話題すら持ちただす。
「・・・俺、先輩に面倒見ててもらったんすけど、先輩は、多分、俺に勝って欲しくなかったんすよ」
「ほ~ん。んで?なんでしょげてたん?」
「・・・え?」
「あ?」
反梟武 蚩尤と顔を合わせる。なんとも歪んだ顎の骨格をしている。フードファイティングに不向きの体つきだ。その体でどうやって名門で勝ち抜き、ここまで来たのか。
「あ~・・・話変えよか。俺はな、君に割と期待してたんよ」
「・・・」
反梟武 蚩尤の言葉は爆食院 饕餮を的確に傷つけていく。
「俺はな、見ての通り才能ないんよね。あはは、一昨年山俵、あ~君んとこの主将さんね。惨敗してさ。そっからまあ~長いとこ努力したんだわ」
「主将、強いですもんね」
「そ。相手にもされんかったわ。シングルなのに。んでな、俺は体細いし内臓も弱い。だから胃も触れくれないし、折角風秤寺が作った胃分割のメソッドも使えん。あははは」
「どういう、ことですか?」
「俺はな、食べて、溶かして、吸収して、そのエネルギーでまた食べて。それを繰り返すだけで青校のトップに立ったんさ」
「・・・俺と、同じ?」
「そういうことよ。だから君が山俵倒した聞いてな、嬉しかった反面、悔しかった。だからここで君食うてやろと考えてたんよ」
「でも、俺は・・・・俺の勝ち方は、勝ちは、きっと間違い、なんです。すんません」
「それよ。腹立つなぁ、俺はここにいないんか?」
「・・・え?」
「もういいわ。準決は降りなよ。これ以上貶めんといてくれ。俺も、山俵も」
ずかずかと細い足で反梟武 蚩尤は人並みへ消えていった。一人残された爆食院 饕餮は項垂れる。
未経験一年生にして青校副部長に続きあの山俵 竜を食った期待の新人 爆食院 饕餮。その食とは・・・!?
学校新聞に書いてあったことを思い出した。
「・・・誰も、先輩のこと、知らなかったんだ」
助けなきゃ
その声は準決勝の品目の発表のアナウンスに掻き消された。だが、それによって爆食院 饕餮の胸に深く深く染み込んでいく・・・
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