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フードファイティンガー爆食!! そのきゅう

 桜餅 大納言 猿田彦(さくらもち だいなごん さるたひこ)は三回戦を終了五分まで見ていたが、その微かな違和に気が付き会場を飛び出した。序盤の山俵 竜(やまだわ りゅう)は快調で中盤に追い上げてきた爆食院 饕餮(ばくしょくいん とうてつ)に引っ張られることもなく優勢を崩さなかった。しかし、明らかに変だった。きっと聴衆の大多数は気が付くことのない不自然さ。居ても立っても居られなかった。

「どこだ・・・どこにいやがる・・・!ギャリュギャリュ(駆動音)」

 会場となった母校の廊下を全速で駆けながら桜餅 大納言 猿田彦は教室を覗く。三階の、体育館から一番遠い教室で、ついに風秤寺 窮奇(かぜはかりでら きゅうき)を発見する。その姿を見るやいなや桜餅 大納言 猿田彦は彼の襟を掴み捻り上げる。

「てめぇか!!!ヴィヴィヴィ(駆動音)」

「・・・どうしたんだい。まだ君にとっての決勝戦は終わってないだろ」

「終わったようなもんだよあんなのは。おい、部長に何した?ガッガッガガ(駆動音)」

「答えろよ!!」

「・・・君が愛なんて言うからさ。助けてあげるのが友達の務めだろ。だからさ」

 桜餅 大納言 猿田彦は告白の途中の風秤寺 窮奇を放り投げる。机や椅子がガラガラと音を立てて崩れる。誰かの忘れた教科書は風秤寺 窮奇の下敷きになった。

「あいつは、爆食院 饕餮は!部長に勝てる技量なんてついてねぇ・・・勝てるわけがねぇんだよ!!あんなあいつは!!!」

「なんでそんなことを言うんだい。君が育てたんだろう」

「・・・俺が育てたよ。当り前だろ」

「なんだよその沈黙は。あぁ、”負けるように”が抜けていたからか?」

 風秤寺 窮奇はそう言って教室の開けられたドアを指さした。崩れた机に埋もれながら指したそれは、最悪のタイミングで桜餅 大納言 猿田彦と爆食院 饕餮を出会わせた。



 爆食院 饕餮と山俵 竜のフードファイティングは爆食院 饕餮の勝利で幕を閉じた。勝負を終え、山俵 竜との固い握手を済ました爆食院 饕餮は疲れ切った体を引きずり、会場の体育館を出て校内を歩いていた。強敵を食い下ろした勝利の酔いか、部長に勝ってしまった緊張からか、歩きなれた母校の廊下は回っていた。

 突如、三階から大きな音がした。机を大きく倒したような音に爆食院 饕餮は悪い予感がして、足を引きずり向かった。

「・・・先輩?」

 

 爆食院 饕餮の胸中をよそに県予選は準決勝を迎える。一年生にしてベスト4に入った爆食院 饕餮へ向けられる視線は期待から好奇へと移り変わっていく・・・

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