私はなぜ昔のタモリを評価するのか

 みうらじゅんが以前新聞で、自分で質問を考えて自分で答えるという連載記事をやっていた。

 この中で「小説の登場人物が覚えられない」というものがあって、回答は「映画化されて自分の知っている俳優が演じる事を考えたらいい」だった。「ただし、俳優の選び方で原作と全く印象が違う話になったり、シリアスな話がシュールなお笑いコントになったりする可能性があります」(うろ覚え)ということだった。

 とても解りやすい。これ、吹き替えの声優でも当てはまるよね。全員山寺さんにやらせろ? それはないとして。


 意図的にパロディドラマを合わなそうな俳優にやらせるというのは、昔は萩本欽一がよくやっていた。「欽どこ」でやったパターンだと、最初は似合いそうな人が演じているのだけど、どんどん演じる俳優が変わっていって、「さっき出た◯◯さんのヒロインが良かったのに」という展開だったり。


 お話まるごとだと、昔のマンガやアニメには、レギュラーの登場人物が名作となっている作品のキャラを演じる(あるいはその劇の練習をする)エピソードがあったりした。「Dr.スランプ」で千兵衛さんが「ねこずきんちゃん」をやるのとか、面白かったな。


 昔の正月特番の定番で、「かくし芸大会」というのがあって、ひどい(ほめてる)パロディドラマをよくやっていた。スターウォーズ、インディージョーンズ、宇宙戦艦ヤマト、おしん、とにかく流行った作品は片っ端からやっていた。

 だから近年まで続いていたら「チン・ゴジラ」とか「君のナハ」(オチはもちろん、せんだみつおが出てくる)とかやっていただろうと思う。


 もう少し後だと、とんねるずがサンダーバードや仮面ライダー、バットマンなどのパロディドラマをやっていて毎週見られた。小松政夫がゲストで出て「はい、これは素晴らしいセットですねえ」なんて解説を入れた事もあった(知らない人に解説すると、彼のモノマネの定番は映画解説者の淀川長治)。

 パロディとうたってはないけれど、月曜ドラマランドの「ザ・サムライ」は良かった。原作ファンは苦笑するかも知れないが、ずうとるびの江藤さん(怪しい生物のイラストでおなじみ?)がハリアーやメカマウスというロボットで活躍する所が素晴らしかった。


 組み合わせ方で笑いをというと、やっぱり私は初期のタモリが好きだ。

 NHKのお昼の農家向けの番組とか、北京放送のラジオ番組がノイズ混じりに入ってくる様子とか、教養番組での有田陶器の歴史の解説(実はデタラメ)とか、矢追純一UFOスペシャルの実況と吹き替えとか、それまでモノマネのネタとして扱われなかったものを次々と演じていった。


 モノマネは普通、見たことのあるものに似ているのがおかしい。似ていない所がおかしいモノマネもあったりするが、タモリの場合は「もともとそんなものはない」という場合もある。ありもしないもののモノマネが似ていると評価されるのだ。


 タモリがまだ飲み屋で芸を披露している頃、ターザンのモノマネと中国人のモノマネができるなら、中国人のターザンもできると言ったのは筒井康隆さんらしい。

 真偽は解らないが、どこか筒井さんっぽいエピソードだ。

 これを応用すると北朝鮮の演説のモノマネと、鉄道の駅員のモノマネから北朝鮮の鉄道の駅員もできる。
 田中角栄の真似から「もしも社会党に田中角栄がいたら」とかやって、他に田中角栄のできる人に自民党の田中角栄をやらせて、議論をさせたりというのもやったらしい。馬鹿馬鹿しくて好きな話だ。


 最近は(さんざんバカにした)名古屋とか、(デタラメな歴史を語った)有田に「ブラタモリ」で行っているが、そのシチュエーションだけで笑ってしまう。


 一度、ありもしない鉄道の歴史を語ってほしいと思っている。

 タモリの真似は、なかなかやろうったって難しいよね。

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