キザシに至る道

 昭和の、自分たちよりだいぶ上の世代とか、あるいは近い世代でもヤンキー気質だったりする人には「セダン信仰」がある。ヤンキー気質の人はだいぶミニバンに移ったが。
 2ボックスの軽自動車やライトバン等は「格下」で、3ボックスセダンの方が良いという信仰である。

 例えば、「こち亀」で大原部長がセダンを買う話にそれが現れている。

 セダンであればカローラやサニーでも良い、しかし職業上の理由で3ボックスセダンが買いにくいという人もまた存在する。

 それは、今は多分存在しないんだろうが、トヨタや日産の駐車場に、なぜか自社のクルマがほとんどというアレである。「外圧」ならぬ「内圧」である。

 かつてアメリカの自動車会社の言った非関税障壁とは、この辺、「関連会社」、「取引会社」、「昔からの付き合い」といった所であろう。

 ダイハツがコンパーノ・ベルリーナの後、(ほとんどトヨタ車の)コンソルテ、シャルマンを販売したが、これは自社のクルマを買わせるというのと関係あるかは分からない。

 ホンダはホンダ1300、ホンダ145という、3ボックスセダンでもややマニア向け(スバル1000→ff-1→1300Gと対比される)のクルマを作った後、間を置いてアコードの4ドアセダン(サルーン)を売り出した。FF、CVCCエンジンだが、それ以外にホンダらしいクセは無かったように思う。ホンダはシビックの4ドアセダンやバラードも発売。高級車のホンダ・レジェンドも発売した。

 ホンダのお偉いさんに「自社の高級車に乗りたい」という意識があったかは分からない。

 まあ、レジェンドは取引先にナメられないクルマだとは思う。

 レジェンドやシビック・セダンはもう無いが、アコードの4ドアはしぶとく残るようだ。なんかホンダの歴史を考えると不思議である。

 さて、小型の1ボックス、2ボックスに強いメーカーにスズキがある。
 スズキも3ボックスセダンとして、カルタス・エスティーム、エリオセダン、SX4セダンを作っている。

 そして、スズキ・キザシである。私の友人は「浜松でしか見たことがない」と言った。

 しかし、浜松の企業の偉いさんは嬉しかった事だろう。大手を振って高級車に乗れるんだから。そういう問題ではない?

 しかし、覆面パトカーに多く使われたというキザシも既に生産中止らしい。

 キザシはユタ州ボンネビルの塩の平原で速度記録に挑戦するという、意外な面も見せていたらしい。

 で、日本国内ではセダンへのこだわり需要は減ったが、どうもスズキの3ボックス4ドアセダン自体は、シアズという名前で国外のアジアでは生産され続けているらしい。

 まだ国外にはセダン信仰があるのかもしれない。

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