日産S13シルビア

 とにかく、CMが印象的なクルマだった。

 青い地球の映像が映る。
 ハモンドオルガンによるイントロダクションに始まるBGMはプロコル・ハルムの「青い影」という曲だ。
 画面上にラインが入り、地球の一部分が拡大され、英文字が入る。

 そこでナレーションが流れる。

「今、地上に噂がある」
「東経139度46分」
「北緯35度39分」

 最後まで見てもクルマの姿は見えない。
 これが私の最初に観た日産「アートフォース」シルビアのCMだった。

 その後のCMで、初めてライムグリーンの流れるようなボディを見た。一見直線的に見えるが、美しいカーブを描いている。無駄な部分を感じさせなかった。安易にリトラクタブルライトにしない所も良かった。
 同じくBGMはプロコル・ハルム「青い影」だった。
「SILVIA」の文字が上から順に縦向きに入る。

「これは、新しいポリシーの表現です」

 キャッチコピーも良かった。

 本当にカッコいいCMだなと思った。

 日産シルビアの中では、どこかで見ていた初代シルビアの持つラインも美しいと感じていたが、このシルビアはまた別の意味で美しかった。

 確かにS13シルビアは「現実」としてはデートカーのイメージであったし、後のCMもデートカー的な感じの物が作られたりした。
 DOHCエンジンを搭載しており、走り屋にも注目されていった。

 しかし、やっぱりそれだけであの台数が売れたとは思わない。プラスアルファ、何かがあったのではないかと思う。

 自分は(ifとして)乗る可能性あったかと言うと、無いんだけど。

 このクルマの似合う風景は、やはり都市とか、高速道路だろうなと思う。あとは展示スペースに置いてあるとか。

 何年か前に旅先で、バックヤードで明らかに廃車になっている姿を見たが、ここに「青い影」を流したらどんな感じになるだろう。「諸行無常」という言葉が浮かんだものだった。

 セダンじゃないんだが。

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