流浪するMG

 今となっては「MGってどこの自動車メーカーですか?」と言われる時代になってしまった。

 自分が名前を知っている人、それも昔は能力のあった人が、辺境に飛ばされた気分である。

 とは言え、自分もやっぱりMGの全盛期は知らない世代だ。家の近所に最後期のMGミジェットが2台いたのは覚えている。

 このMGはスポーツカーで知られた英国のブランドだった。ジャガーより格付けは下か。

 自動車雑誌の広告にポルシェの前はMGが人気だった話が書いてあった。
 本国はもちろん北米でも、フェアレディZの席巻する時代の前には大人気だった。

 戦前のK3マグネット、戦後まで続くTシリーズミジェット、フラッシュサイドで流線型のMGA、リプロダクトのパーツで新車が作れるという噂(噂だよ)のMGB、何となく使いやすそうなMGB-GT、3000ccで日本では3ナンバーになるMGC、そして小型スポーツカーのMGミジェット(スブリジェット)。

 MGBとMGミジェットは、1970年代中頃ぐらいまでは割と見掛けたクルマで、縦格子のグリルとメッキバンパーが特徴だった。最後にはウレタンバンパーになる。このウレタンバンパー化が致命的になって売れなくなったとも聞く。

 MGにはセダンもあった。しかし傑作と言われるZA/ZBマグネット以降、バッジエンジニアリング車が続く。バッジエンジニアリングとはセドリック/プリンスグロリアのように、別のブランドで、エンブレム以外はあまり違いの無いクルマを作る事である。

 他に特筆すべきセダンは、オースチン、モーリス、ライレー、ウーズレー、ヴァンデン・プラとの相乗りになったコンパクトな前輪駆動車ADO16である。MGは1100と1300があった。

 そうそう、マッチボックスのミニカーで、後ろの座席に犬が乗っているMG1100がある。トランクを斜めにカット、ただサイドからはテールフィンが存在するおかげで3ボックスのシルエットになっているのが面白い。

 そのMGも英国自動車業界再編の波に飲まれ、ローバー傘下となる。既にいのうえこーいち氏の保育社の世界の名車の本(British Saloon)の時点で、スポーツモデルは無かった。
(2ボックスのメトロ、マエストロ、3ボックスセダンのモンデゴがあったようだ。)

 その後のユーノス・ロードスターやホンダ・ビートの流行は、「あのMG」を復活させた。MGBを近代化したRV-8、この頃のローバーはホンダと組んでいたんだなあと思い出すリアを持つMGFである。

 MGZS、ZTというセダンもあった。

 さらにその後、ローバー破綻でブランドは中国に移る。
 上海MG6は「マグネット」の名を持ち、英国のレースに出場した。他にセダンはMG5もあった。

 タイやメキシコではそこそこ売れているらしい。

 日本を離れた日本のブランドが、こうなったら寂しいなあ。それでいいのかなあと思った話だった。



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