アニメ思い出し語り 32 一休さん

 実在の人物をモデルにしたフィクションであり、登場人物の設定がとても上手いと感じた作品だった。

 もちろん、蜷川新右衛門は一休より年下で、仕えていた将軍も違うとか、そもそも室町幕府に寺社奉行はいないとか、金閣(北山山荘)にいた頃の足利義満は将軍ではないとか、突っ込み所は非常に多いが、それは水戸黄門なども同じ事である。

 このアニメの中の一休さんは後小松天皇の子供だったという説を採用している。初期の話を観ると、南朝と北朝の対立がまだ残っており、北朝方の足利義満というのは一休さんの敵役にはピッタリな存在であった。実在の足利義満の子供の頃、兵庫の琵琶塚の風景を気に入り「この景色を京まで持って参れ」と言ったというエピソードも残っている。

 んで、敵方の偉いさんの子供を寺に入れるというのは、そのまま牛若丸である。
 一休の父が後小松天皇という事は将軍さま、和尚さん、新右衛門さんの他、兄弟子の哲斉も知っている。哲斉自身南朝方の武将の子だが、その友達の武将の子が来るエピソードもあった。彼は一休を自分たちの仲間の大将にしようとする。

 この作品の中の安国寺は山の方にあるように見えるが、実際には四条大宮西にあった。
 やんちゃ姫は五条の公家の娘だし、桔梗屋も多分京都市内だろう。金閣寺も歩いていける範囲だと思う。新右衛門さんはどこに住んでいたんだろう。

 話の内容としては、実在の(主に大人になってからの)一休さんのしたとされる奇行はもちろん、各地に伝わる昔話のとんち、狂言にある滑稽話、大岡越前守や森の石松などの講談、寿限無などの落語も題材に使われた。

 最後にはそれらすら使い切り、潜水艦の原理を使った龍神を作り、グライダーで空を飛ぼうとし、嵐の中で凧揚げをして雷の正体を突き止めようとした。もはやとんちの範囲を超えている。

 アジア各地でも人気となった作品である。

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