マシュマロとめまい

 僕は、めまい持ちである。才能はまったく持ち合わせていないのに、持病なんかは各種取り揃えている。神様の悪意を感じる。
 良性発作性頭位めまい症というやつで、目が覚めればいきなり世界が回っている。その遠心力で、常時車酔いのデバフがかかるのだ。たぶん皆が思ってる四倍ぐらいしんどい。ほんとしんどい。
 金曜日の夕方から、それが始まった。めまいの期間はまちまちで、二時間から三日間ぐらいが多い。快調になるまではさらにかかるのだが。今回は最悪のパターンで、三日間ベッドの上から動けなかった。
 トイレに行くのも一苦労で、壁にもたれながら体を引きずって往復。帰りに水分補給してベッドに戻る。あとは寝るだけ。次に目覚めた時に、めまいが治まっていることを祈りながら目をつぶる。三日間、祈りが届かなかった。もしくは無視された。
 三日目に、やっと口に入れたのがマシュマロだった。オカンがくれたやつ。「マシュマロいる?」「いや、いらんいらん」という会話があったはずなのに、なぜかカバンに入っていたマシュマロだ。こういう雑な母親なのだ。しかも僕にまで遺伝されてる。すごく困る。
 まったく興味がないマシュマロも、二日絶食したあとだと悪くない。二日絶食したのに、おいしくないのもどうかと思うが、悪くはない。小袋に入った小さめのマシュマロを三回にわけて食べた。
 甘い。甘いのだ。口の中で舌が砂糖水で半身浴してる。普通に食べるのに飽きて、口の中で溶かしたりするからだけど。後味まで甘い。
 
 三連休を、無為にすごした。めまいのためにベッドの上で。
 映画を三本見た。『ドッグマン』がとてもおもしろかったので、主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズが出ている『ニトラム』も見た。
 『ディナー・イン・アメリカ』もおもしろかった。三本とも僕的には当たりだ。
 そして、マシュマロを食べれるようになった。無理に食べようとは思わないが。これからは、オカンが「マシュマロいる?」と聞いてきたら「ああ…一応もらっとく」と答えそうではある。
 そう考えると、無為よりかは少しマシな三連休だったのかもしれない。

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