キレイなカタチ

 キレイな物語を書こうとして手がとまる。
 頭の中ではピカピカした風景が浮かび上がるのに、キーボードの手はとまったままだ。
 もっともらしい理由を付けて、パソコンを閉じようとする。
 今日は気分がのらない。もうこんな時間だから。
 毎日のように、僕は夢へのドアを閉じる。

 小説家へのあこがれは、まだ心に残っている。
 何度も才能がないとあきらめて。あきらめきれなくて。あきらめて。
 
 日の当たる場所に立ちたかった。
 そうすれば、今まで逃げ出してきたことが嘘になる。
 今までは運が悪かっただけです。僕の実力はすごかったんです。
 妄想と想像で時間がすぎ、現実の時間は残らない。

 毎日の後悔と、毎日のあきらめで、僕の一日がすぎていく。終わっていく。

 あきらめきれなくて。あきらめて。あきらめきれなくて。あきらめられないです。
 こんなにもあきらめられないのは、僕の噓人生の中ではじめてで。

 思い描いていたキレイなカタチじゃない。才能も溢れないし、余裕もない。
 とてもいびつできたならしい。
 でもがんばってみようかな。

 がんばりますと言えないのは、ムダなプライドが邪魔をするから。
 やっぱりキレイなカタチじゃない。

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