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100分の2と50年、そして毎年


庭にはチューリップの球根が100球以上植わっている。でも今年花芽がついて咲いたのは2球だけだった。健やかに葉が伸び期待が大きかっただけにガックリも大きい。植えっぱなしにして3、4年以上が経ち、もっとかな。咲く花が年ごとに減ってきて、これでほぼ全滅した。チューリップには申し訳なかった。良いオーナーならこんなことにはならなかっただろう。

以前は花が終わったあと葉が黄色くなり球根が十分に回復してから掘り起こし、一つ一つを傷をつけないように洗い消毒液につけてから乾かし保存していた。それでも花が咲かない球根もあり土に帰っていった。丁寧な作業をしないと翌年も咲いてくれないため、植える数は私が出来る範囲にしていた。

ある時、植えっぱなしでも大丈夫と書いてあったのを読んで、やってみたら翌年8割ほど咲いた。それから春に庭中にチューリップが咲くのを夢見て球根数を増やしていった。葉だけは元気に伸びているから息災ではあるけれど、球根が十分に育たない土地だとわかった。日本(東京)の高温多湿が苦手なチューリップを球根本来の宿根草として育てるのは土台無理だった。園芸品種として一年草と同じ命。

小学校の理科の授業でもらったヒヤシンスは長い年月をかけてようやく2球になった。ヒヤシンスも品種改良されて歴史が長い。(おそらく園芸品種として育苗の権利のために改良されたのか?)自然分球はほぼなく、掘り上げて人の手で分球しないとならない。水栽培のを一度育てたが、花の後に地植えしても球根が疲労していて育たなかった。水栽培用も一年草と同じ命。園芸品種の球根の花は毎年の春に消費される商品でもある。

手間をかけずに丈夫に育ちほどよく増えてくれる宿根の球根を探しては植え、その都度申し訳ない気持ちでいっぱいになる。小ぶりのラナンキュラスやアネモネも三年目には再会できなかった。

一方、期待に応えてくれるシラー・カンパニュラータ。5、6球が群生するまでになった。
オーニソガラムは花ニラが終わるとその間から、ドクダミと一緒に顔を出す。

春の庭は自然の野の姿に近づけようとすると、夢のような花いっぱいの庭にはならず色味は寂しい限りが現実で、やはり色鮮やかな園芸品種に少しお手伝いしてもらうことになる。そして園芸品種は数年後は土に消えてしまう。

よその整ったお庭を見ると隣の芝生は青いとうらやましくもなるが、我が家にはマンパワー的にも届かないことで、野趣溢れるままにするしかない。生命力の強い雑草どもに打ち克つ、あるいは共存できる植物だと今度は雑草ども同様にコントロールは難しくなる。スズランがそう。

自然相手は難しい。毎年、環境が合わなくて消えていく改良された園芸品種の花を見送りながら、山野に近い庭をどう整えるか考える。