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走っていた。僕は山を走っていた。
2分程前転げて擦りむいた膝を庇うことなく、僕はぬかるんだ山の中を只管走っていた。

ケツが揺れた。僕のケツが揺れた。
ブリンブリンと音を立てて揺れる僕のケツは、まるで自立したひとつの外部ユニットであるかのように、僕の背中側をブリンブリンと揺れていた。

ジジイがいた。きたねぇジジイがいた。
見たところ70は超えているであろう、汚らしいジジイだ。ジジイは僕のケツを見るやいなや、大きな声で叫んだ。

「 パ ッ シ ブ 」

何を言っているんだこのジジイは。どう考えてもアクティブだろうが。ふざけるな。アクティブさにおいては他の追随を許さぬと言われて久しいこの尻、そんなおっきいおっきい声で貶されたとあっちゃあ、オイラの面目丸潰れ、バイオマグロのポン酢和え、終いにゃ山椒をひとつまみ パラリ ってなワケ。

このケツのわんぱくさを見せつけてやるため、急いで僕は横振りだったケツをブリブリと縦振りに切り替える。ブリブリブーリ、ブリブリブーリ、尻が、尻が揺れる。僕の尻が。嗚呼嗚呼嗚呼。するとジジイ、鼻をヒクヒクさせてこれまた大きな声で叫んだ。

「 パ ッ シ ブ 」


なぁんだ、くしゃみだったのか。紛らわしいことしやがって。
僕はそこに落ちていた木の枝をジジイの鼻に突っ込みほじくり回した。

ジジイは電車になった。



止まらない暴走列車・ジジイトレインに乗って、僕は海へ旅に出た。山を走ってばかりでは見えてこなかった景色が、今目の前に拡がって、拡張して、拡張子です、

海.jpg

非可逆圧縮の海が半笑いで鮫を喰っていた。
ジジイトレイン、我関せずといった顔で海の上を突き進む。一体僕は何処に連れていかれるんだろう。

海を抜けると、そこはむきえびだった。


※ようこそここへ 遊ぼうよパラダイス
胸のりんごむいて※

☆大人は見えない しゃかりきコロンブス
夢の島まではさがせない☆


空をほしがる子供達
さみしそうだね その瞳 ついておいで
しぼんだままの風船じゃ
海の広さを計れない まして夢は飛ばせない
スーツケースの中に

愛の言葉を掛けて 入れて行こう

ごきげんいかが はしゃごうよパラダイス
心の傘ひらき


(☆くり返し)

嘘じゃないよ息を止めて額にほら
風がぬけるシーツは騒ぎ出す
ベッドはもう汽車になって銀河行きの
ベルが鳴れば夢は止まらない何処までも


シルクロードに響く
笛の音色をまねて風を切る

(※くり返し)
(☆くり返し)


ごきげんいかがはしゃごうよパラダイス
心の傘ひらき
(☆くり返し)


夜空は綺麗だ。夜空は嘘をつかない。夜空は裏切らない。
フェラチオジジイが築き上げた衆道の大帝国も、烈しい憎悪の音とともに1代で崩れ落ちた。

僕達は、何を信じればいいのかな───。


ぽとり、涙が落ちた。泣いているのは、僕?

いやちがう、ジジイトレインだ。

どうしたの?ジジイトレイン。そんなきたない泣き顔見せないで。もう走らなくていいよ。もう悩まなくていいよ。ジジイトレイン、君は君のために、生きて良いんだよ。嫌なら死ねよ。

「Thanks…笑」

ジジイトレインはそのひと言を残し、暗く深いゴミ箱の底へ消えていった。最初っから最後までゲボみたいな臭いしたなアイツ。


僕もそろそろ行かなきゃ。約束の時間だ。

いつの間にか右手にはアントニオ猪木のサイン入りAVがしっかりと握られている。

走り出した僕はもう誰にも止められない

だって僕はもう


ひとりじゃないのだから。
(嵐の𝑳𝒐𝒗𝒆 𝒔𝒐 𝒔𝒘𝒆𝒆𝒕(インストゥルメンタル)が流れる)

ジジイトレインの分も、僕、生きるよ



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………………という内容の本を出版したいので、500万円ください







小林敬「


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