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だまされてもいい。ワクワクさせてほしいのだ

今の人は映画を観る時、何を見て決めるのだろう?
サブスクで片っ端から見るのかな?
私の時代は新聞広告と街に貼られたポスターだった。
封切作は全部新聞に広告が出ていた。映画ポスターは街中どころか通学路にもたくさん貼りだされていた。中には結構きわどい写真のものも多かった。映画が品行方正な表現媒体でないことはそんなポスターで学んだな。いまどき映画ポスターが見られるのは映画館か駅くらいのものか。

入院前に買ってたのだが、あまりに大きな本なのでちゃんと見てなかった本を自宅に戻ってじっくりと読んだ(+眺めた)。

「映画広告図案士/檜垣紀六 洋画デザインの軌跡」。
A4変型版、383ページで9,000円の特大本だ。
1960年から90年代にデザイナー檜垣紀六さんが手がけた外国映画ポスター、チラシ、題字ロゴ、新聞広告を掲載して解説。『ブレードランナー』『燃えよドラゴン』『エクソシスト』『ランボー』『サスペリア』『昼顔』『時計仕掛けのオレンジ』など約600本。私が一番熱心に映画を観ていた時代なので、掲載作のほとんどを観ている。

それぞれの作品について、制作した状況や意図や工夫したことを詳細に説明してくれている。デザインや製版に関する技術的な説明もあって、印刷の仕事もしていた私にはさらに興味深い。

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◎チラシの指定原稿(文字や色の指示)。アナログ時代はこれが普通。

今は映画があまりに簡単に見られるようになってしまい、見る前のワクワク感が薄くなった。昔はポスターやチラシを見て前売り券を買って、友達と情報交換をして、とにかく公開を心待ちにしていたものだ。その時に想像と期待を膨らませてくれたのが映画のポスターだった。

映画広告には誇張がつきものだ。この本でも書かれているが、実際には存在しない場面が足されたり、本当は地味な作品なのに大作風に見せられたりというのはよくあることだった。芸術映画なのにポルノ映画風に宣伝された作品もある。やられたなと思ったことは何度もあるが腹は立たない。こういう怪しさも含めて映画の面白さだと思うし、観たら観たで自分なりの発見もあるし、想定外のものほど気に入ることもある。
大切なのは評価の定まったものだけを観るのではなく、何でも観る貪欲さだろう。広告はその誘引剤だ。煽ってもらってなんぼのものだ。
「日本ヘラルド映画の仕事」と合わせて読むと映画広告および興行の奥深さを満喫できる。



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