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一寸の腹の虫にも五分の魂。

小学生の頃、シールのようなものを肛門に押し当てる検査があった。
蟯虫(ギョウチュウ)検査というやつだ。
ギョウチュウは真夜中に腸から出てきて、肛門周辺に卵を産み付ける。それをシールで採取するのだ。
昭和30年代は子どものおなかにギョウチュウ、カイチュウの類がいるのは普通だったが、今は野菜の栽培も衛生環境も大幅に改革されたので、これらの「腹の虫」は激減している。
こんな検査、今もやっているのだろうか?

こんなことを考えたのは、昨日の新聞で寄生中博士として知られる藤田紘一郎さんが死去されたことを知ったからだ。
有名な方なのでご存じの方も多いと思うが、この方はお腹の中にサナダムシを15年間飼っていたそうだ。

サナダムシ、分かります?体調10メートル以上にもなる寄生虫ですよ。それがずっとお腹の中に寄生していたのだ。
いや、藤田さんによれば共生(異種の生物がお互いに補い合いながら生活する現象)していたのだ。キヨミちゃん(サナダムシに名前を付けていた)のお陰で健康を維持できていたと主張されていた。

藤田さんは、糞尿は汚いもの、寄生虫は悪いものという決め付けに対して、身をもって反論し、過度に清潔になっていく日本社会に警鐘を鳴らし続けてきた。キレイすぎる環境が新たな病気を生んでいると。

サナダムシをお腹に飼う勇気はないけど、腸内にも皮膚上にも多くの常在菌が棲み、人の健康に貢献していることは、よく知られていることだ。
人に害を与える菌もいるが、一部を見て全体を排除しようとする考え方は生態系のバランスを崩す。

私は「一事が万事」という言葉が嫌いだ。
「一つの物事から、他のすべてのことを推し量ることができる」という意味だが、多くの場合、ひとつの欠点を取り上げて、何をやらせてもダメな人、という言い方に使われることが多い。
若い頃、よくそんな言い方をされて、毎回腹を立てていた。
てめえ、俺の何を知ってるってんだ!(すいません、語気が強くなった)

話が逸れたが、人類の登場で地球の生態系が激変し、絶滅する生物も多い。しかし、絶滅させられる理由が、気持ちが悪いとか怖いとかで、それが人類の健康をむしばんでいるとしたら、それこそ怖い話だ。



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