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事実の羅列なのに、この年表はおもしろくてやめられない。

歴史好きというわけでもないのに、よく開く歴史の本がある。
編集工学研究所が1996年に発行した「情報の歴史(増補版)」だ。
前書きに、世界同時年表形式と書かれている。
年度ごとに世界で発生した情報関連のできごとをひたすら並べてみただけの年表だ。
しかし、みっちり書き込まれたできごとの羅列がやたらにおもしろいのだ。

情報といっても、言語や出版、コンピュータ関係だけの歴史ではない。科学法則、発明発見、哲学思想、芸術、さらには流行やヒット商品までが、出来事の重要性に関係なく混然一体として詰め込まれている。
ふつう、年表は時代の推移を見るものだが、この年表は同じ年に何が起こったかを見るためにある。

たとえば、19世紀最後の年、1900年を見てみよう。
パリで万博と五輪が開かれたこの年、フロイト「夢判断」が刊行され、ツェッペリン飛行船が初飛行し、ミシュランのレストランガイドが登場し、アメリカでハンバーガーの販売がはじまった。

今から50年前の1971年は、ドルショックにより為替レートが変動制になり、ロールスロイスが倒産し、「時計じかけのオレンジ」が公開され、日本ではビギや山本寛斎が誕生し、「仮面ライダー」が始まり、カップヌードルが発売された。

これらのできごとを眺めていると、直接には関連していないが、実は「バタフライエフェクト」のようにどこかで繋がっていて、すべては偶然ではなく、起こるべくして起こった必然なのではないか、と思えてくるから不思議だ。事実の羅列なのに、そこに物語を読みたくなるのだ。

残念なことに、この本の年表は1995年までしかない。
1995年は阪神淡路大震災で始まり、オウム・サリン事件が日本中を震撼させ、ウィンドウズ95の発売でネットが急速に普及し、東京都知事青島幸雄が翌年に開催予定の「都市博」を中止させ、コムデギャルソンがトランスジェンダーファッションを発表した年だった。すごい年だったなあ。

それから四半世紀以上経ち、この続きを見たいと思うが、情報量が飛躍的に増えて、歴史に対する解釈が多様化するこの25年間を、書籍の年表形式で一望するのはもう無理かもしれない。
そう思うと、歴史の砂漠にポツンと放り出されたような気分になった。

と、思っていたら、今年の4月に21世紀編が出てました。
すごい。めでたい。

地図や年表って、世界を知る大きな手掛かりなんだと改めて思う。




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