見出し画像

大事なのは☆の数じゃない

入院12日目。2回目の週末を迎える。コロナの感染者数は昨日1日で4,576人。変異株の拡大が続くと報じられている。私は外に出ようもないが、世間の皆さんも外出はままならないだろう。
ネット配信で映画やドラマを楽しむしかない。そんな時の目安なるのが☆の数による評価だ。皆さんはいくつなら観るのかな?

☆の数で映画を採点する日本での草分けは双葉十三郎(ふたば じゅうざぶろう)さんだ。映画雑誌スクリーンで戦後から2001年まで連載されていた「ぼくの採点表」だ。私が中高時代にスクリーンを買い続けていたのはひとえにこの連載があったからだ。

中学時代に映画を観るようになった。最初は興味のあるものだけを観ていた。期待通りに面白いものもあったが、つまらないものもあった。
少し大人になるとテーマ性や社会性で選んだりするようになる。
すると重たい話なのにワクワクする映画もあれば、内容は立派だけど感動しないものもあって、私は考えた。この違いは何なの? 何が違うんだ、と。

その疑問にさらりと答えてくれたのが「ぼくの採点表」だった。
当時公開された洋画のほとんどを☆20点と★5点の組合せで採点し、それに歯切れのいい文体の短評が付いていた。

双葉さんが評価するのは内容ではない。出来だ。どんなに立派な見かけと内容(主題、芸術性、製作費)を持っていても、映画としての作り方が悪ければ、バッサリと斬って捨てた。一方で話題にもならない小作品も、出来がよければ高い点数を付けたし、内容も出来もどっちも最悪の映画だって、ちゃんと観て評価された。

私はこれを毎月何度も読み返した。
タッチとかテンポとかムードとか言う分かりやすい言葉の奥に「演出」という言葉が見え隠れする。どうもこれが面白さの「鍵」のようなものだということが次第に分かってきた。その鍵は映画監督が握っていることも。

双葉さんの評価をきっかけに、世評で二流と決めつけられていた映画を観るようになった。映画の興味が大きく広がった。映画の面白さが一様ではないことを学んだのだ。大切なのは選んで観るのではなくて、観られるものはすべて観るということも。

☆は分かりやすいけど、それに頼ると世界が狭くなるなあ。

蛇足
「ぼくの採点表」は50年にもなる連載なのでその量は膨大だった。
昔からこれをまとめて読めたら、と願っていたが不可能だと思っていた。
それが約30年前に全集として出版された。すごくうれしかった。
編者の瀬戸川猛資(せとがわたけし)さんの映画界における偉業だと思う。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?