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「大阪環状線 ~愛のエイサー プロポーズ大作戦」(堀くるみ 彩木咲良 出演)

2021年12月11日に初日を迎えて全20公演。25日のクリスマスに無事、千秋楽を迎えることができました。およそ2週間の公演期間。当初はとても長く感じましたが、はじまったらあっという間。公演後のツイッターのタイムラインがとても楽しくて、初日のジャニーズファンの方の「彩木咲良さんのスイッチの入る瞬間をみた」というようなツイートをみて、あっ!これはダンスで魅せるシーンがあるんだなって想像できて、それ以降、舞台の感想をツイッターでみるのが何よりの楽しみになりました。特に、ジャニーズファンの方は、自分の推しをみに舞台を見に来ているわけで、女性の共演者には良い印象を持たれてもおかしくないもの。しかし好印象なツイートがとても多くて、よくオタクは推しに似るみたいな言われ方をしますけども、今江大地さん、小柴陸さんの人柄がそのまま映し出されているのかも・・・と感じました。

堀くるみさんと彩木咲良さんの出演が決まったのは、2021年7月。主演がジャニーズの方、劇場が大阪松竹座ということで、もう本当に驚いて。でも、主演者リストには、最後に追加されて名前が記載されているようで、数多くの出演者のふたり。少ないセリフでも、大阪松竹座に立つ二人がみられればおっけー的な感じで思っていたら、時間の経過とともに、どんどん名前があがってきて、最終的には吹奏楽部の5人の中のふたりでええっ!と思い、ポスターが公表されたときは、ふたりの写真がどーんと載っていて、期待がどんどんと膨らんでいったわけですが・・・。
そして、今回の舞台は、どのようなかたちで興業が行われるのかがホントに謎で、発券したチケットやホームページをみても分からず、主催は関西テレビで松竹は劇場を貸しているだけなのかなぁ・・とも思ったのですが、パンフレットを購入してページを開いてみると、一ページ目には松竹専務取締役の「ごあいさつ」。これは、松竹が関西テレビとジャニーズの協力のもと、威信をかけてつくる舞台だわ・・ということに気が付いて、本当に驚きました。大阪松竹座の歴史に刻まれるひとつの公演という位置づけになるということ。これはすごい舞台だわ・・と、劇場に足を運んで気づかされてしまったわけです。

おそらく、今回の舞台は、シノプシス(大まかな物語)とラストのエイサーと吹奏楽部の演奏。箕面自由学園高等学校吹奏楽部の全面協力でオリジナルの音源を劇中に使ってクライマックスにするというアイデアは決まっており、それらのパーツを当てはめていくように、主演者の「あてがき」で、台本が練られていったと思うのです。なので、出演者がとても活き活きとしている。
キャスティングは、実力のある若手から、小劇場からのたたき上げで演劇の最前線を駆け抜けてきたベテランという練りに練られたもの。ただ、若手とベテランが同じ舞台に立つというものはリスクが多少なりとも伴うもので、若手とベテランがかみあわない瞬間というのを実際にみたことがあります。たまたまその時の公演だけだったのかもしれませんが、大阪環状線では、その点が最高で、ベテラン勢が円熟味すら感じる演技を魅せて、その追い風で若手は活き活きと演じているように感じました。特に私は、1980年代、小劇場の舞台が大好きで、特に今回出演されている上杉祥三さんが主演をされていた劇団夢の遊民社の「野獣降臨(のけものきたりて)」の初演をみていたので、その方と自分の推しが共演するという、ごくごく個人的なご縁の不思議を感じていて、「野獣降臨」と「大阪環状線大正駅編」の2つの舞台をみたのは、おそらく私くらいかなと思ってしまったのですが・・。

私は、ジャニーズの方が主演の舞台をみるのは二回目。一度目は、1999年にみた草彅剛さんの「蒲田行進曲」。草彅剛さんが役者として大きく飛躍したきっかけになったもので強く記憶に刻まれてる舞台でしたが、大阪環状線の主役であり座長の今江大地さんは、その人柄がそのままステージに広がり、隅々まで浸透していく。物語を通じて語られる心温まるハートウォーミングなほっこり感は、今江大地さんの人柄によるもの。そして、今回の舞台で、一筋縄ではいかない恋愛に悩む小柴陸さんも、とてもていねいに演じていていると感じました。

今回、舞台出演が初めてという阿部純子さん。しかし初めてとは思えない圧倒的な存在感。舞台は映画やドラマとは演技表現が大きく異なるものだと思うのですが、ステージに立つ阿部純子さんは長年の舞台経験がある女優のよう。映画やドラマで培った経験がそのまま舞台でも活かせる地力の強さを感じました。今回の舞台でもは女優という役柄で、メジャー感と同時に感じられる奥ゆかしさ、さらに関西の女性特有の気の強さを見事に演じていたと思います。

ひときわ異彩を放っていた吹奏楽部部長の寺田もかさん。シンガーソングライターで200曲以上のオリジナル曲を持ち、今回の舞台では自作の曲が劇中歌となっいたことが今回の舞台に深みを与えていたと思います。歌うことにコンプレックスを抱えていたのを姉妹でこの楽曲を歌い、自信を取り戻すシーンは中盤のみどころで感動的でした。

堀くるみさんは、風の噂を風から聞くことができる特殊能力をもつ役がら。いわば狂言回しの役どころで、舞台のアクセントとなる役割であると同時に、物語をグッと前に押し出すキーパーソンとなる存在。
堀くるみさんはスターダストアイドルの中でも、トーク力に長けてバラエティに強く、司会もできる実力の持ち主。場の空気を読むチカラが、そのまま風の噂を聞くチカラとリンクしているように感じました。舞台の冒頭、毎回変わるセリフや、舞台のまさかのアクシデントを「風の噂」にして笑いに変えるアドリブなど、場の空気を読むという持ち前のスキルをフルに発揮された舞台になったと思います。
そして、小柄な堀くるみさんですが、小柄であるからこそ舞台映えする役を演じている。身長が低いのに大きなトロンボーンを担当させることで舞台映えさせるキャラクターとさせる演出プラン。堀くるみさんは、どちらかというと自然な演技を得意とする方だと思っていましたが、今回の舞台でキャラの際立ったコメディエンヌとしての完成度の高い演技をみせて、演技の幅が大きく広がったのではないかと思いました。

吹奏楽部員、トランペット担当の彩木咲良さん。「高嶺の花」と「気さくで親しみやすい」という両面を兼ね備えた役柄。一見、矛盾しているような気もしますが、これは彩木咲良さんそのものしかないキャラクターで、おそら台本が「あてがき」で書かれていると思うのです。その効果は絶大で、高嶺の花絵さんは、舞台で活き活きと躍動しているように感じました。
彩木咲良さんは、小さなころから舞台に憧れていたようですが、普段から表情が豊かでとても強い。それはずっと表情筋を地道に鍛えてきたからこそできることだと思うのです。だから、心の中で揺れる動くそのまま表情として映しだせる。
その才能がいちばん活かされるのはコメディで、今回の舞台は彩木咲良さんの得意とする部分を遺憾なく発揮されていると感じました。
彩木咲良さんは、舞台の上で自在にオーラをコントロールできるスキルもあって、それが舞台で見れたのも嬉しかったこと。終盤、エイサーを踊るシーン。途中からリミッターを外し、スイッチを入れる瞬間。それからの数秒間、客席の注目を一身にあびてるように感じられて、それがとても嬉しかったです。

そして、メインキャストの吹奏楽の演奏。私自身、吹奏楽部に在籍していたので分かるのですが、よくぞここまでのクオリティにまで仕上げたと、ただただ関心するばかりでした。

舞台「大阪環状線 大正駅編」。舞台を見てから日にちが経つほどに良い舞台だったなと感じられるのは、老若男女問わず楽しめる物語にしたということ。そして、実力と魅力を兼ね備えたキャスティングに成功したこと。さらに、それぞれ役者の個性を活かした台本を用意し、役者は抜群のチームワークで舞台を作り上げて、その熱量や楽しさが観客に伝わってきたこと。
書いたらごくごく当たり前のことですが、でも、これを実現するのは至難の業で、そもそも老若男女が楽しめる物語にすること自体が難しい。
たとえば、人気のある漫画を舞台化したら一定数の集客が期待できる。それはビジネス的には正しいありかたのひとつですが、どうしても老若男女が楽しめるコンテンツとはならない。

今回の「大阪環状線」は、関西テレビがハートウォーミングなドラマシリーズとして、一話ごとていねいに番組が制作されていたこと。そして、松竹は「人情ばなしの喜劇」を得意とする伝統があったこと。そして、ジャニーズの方を座帳に据えたから可能になったこと。
ターゲットを絞り込み確実な顧客を呼ぶことでどうしてもマニアックな方向になってしまうエンタメ業界において、大阪環状線の舞台でみせた老若男女が楽しめる王道の演劇は、今のエンタメ業界に一石を投じるようにも感じられる。

松竹さん、めちゃくちゃかっこいいぞ!って思うのです。

舞台を見てから、楽しさや面白さ、味わい深さが感じられる。そして、日にちが経ってから、とてもいいものをみたなって改めて思える印象は、つまりはそういうことだと思うのです。

たこやきレインボーの5人を応援していたら、歴史ある大阪松竹座に連れてきてくれたこと、王道のエンタメといえる舞台がみられたこと。ただただ感謝なのですが、できましたらまた、堀くるみさん、彩木咲良さんに加えて、清井咲希さん、春名真依さん、根岸可蓮さんの
元たこやきレインボーのメンバーが活躍する場がみたいので、どうかよろしくお願い致します。

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