マガジンのカバー画像

エッセイ

48
運営しているクリエイター

#わたしの旅行記

下鴨神社の森で

年末の12月29日、下鴨神社へ今年最後のお参りへ。 今年も一年ありがとうございました、という気持ちで訪れた。 もう引っ越してしまったが、以前は鴨川の近くに住んでいて、川を渡って下鴨神社へ散歩にいくのは、日常の一部だった。 日々目にする情景と、さらにその前に住んでいた南仏の景色を重ね合わせ、 まるでゴッホ やセザンヌになったつもりで、神社の森の中で複雑な陰影を描く木々の葉や、水辺のきらめきを眺めていた。 そんな風に物事をとらえ、それを文章にすることは、当時はとても自然なこ

春待つひと

これから本格的な冬が始まろうとしているのに、こんなタイトルなのは、チューリップの球根を植えたから。 うちでは昔から母が、冬にパンジーの苗を植え、その下にチューリップの球根を埋めていた。毎年咲いていたはずなのだが、なぜか昔は目に入らず、それが何年か前からか、春に家に立ち寄るときれいだなと思うようになった。 そのとき、童謡チューリップ歌詞 さいた さいた チューリップの花が 並んだ 並んだ 赤 白 黄色 どの花見ても きれいだな が自然と心の底から湧き上がってきた。 日常

マティス展:ペルピニャン〜コリウールの思い出

上野でマティス展が20年ぶりに開催されているというので、フランスへの懐かしさから観に行った。 *** 南仏のプロバンス地方(エクス・マルセイユ地域)に住んでいた時に、スペインに近い西側沿岸の街を何日間か旅行した。友人と一緒に出発し、途中から別れて一人ペルピニャンに滞在し、フォービズム発祥の地と言われているコリウールを訪れた。 カラフルな家々が立ち並ぶ町並みは、フォービズムの色彩に影響を与えたと言われているが、小さな入江の静かな町というほかは、これといった印象もなく、劇的な

下北沢 / Shimo-kitazawa

下北沢は今まで訪れたどんな街(町)より、様々な場所の色んな要素が集積してできた街のように思われた。 神戸の北野やトアウェストにありそうな、80年台に建てられた低層のデザイナーズビル。よれよれのポロシャツやユニフォームを扱う古着屋が並ぶ、アメ村のような雰囲気。ちょっと代官山を想起させるような細い道の起伏とうねり…。様々な既視感がノスタルジーを誘い、パッチワーク的雰囲気が街の雑多な雰囲気を作り上げている。 高架下は神田と同じようにきれいに改装されていたが、中に入っているテナン