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本当は働きたくないのに。 10日目の朝

聞きたいことがあったのでハローワークに電話をかけて、相手の返答にかっとした。
何か不愉快な対応をされたわけではない。面倒くさそうな声をされたわけでもない。ごく普通に「そういうことはしていません」と答えられただけだ。
それなのに驚くほどの速さで怒りがわきあがった。
電話口で相手が突然キレ始めたときの煩わしさは覚えていたから、そうですか、分かりました、失礼します、みたいなことを言って切り、なるほど、これがキレる老人の根底にある感情かもしれないぞ、と思った。

私は丁重にもてなしてもらった上で、私の望む反応を返してほしかったのだ。私個人を尊重してもらいたかった。
金も払っていないくせに何様だってもんである。

いいわけをすると、毎日書類選考で弾かれていると僻みが生まれてくるのだ。
それなりにがんばってきた経歴を侮られ、重ねてきた年齢をマイナスポイントにされている気がしてくる。誰にも必要とされていないんじゃないかと不安になってくる。

優しい夫でもいればなぐさめてくれるだろうし、子供がいれば子育てで充実感を得ているだろう。
どちらもいない今の私についている名札は「無職」と「中年女性」だけだ。
退職した老人がキレるのも、ひとりぼっちで「無職の老人」として扱われることがつらいからではないか。

結局自分の感情の問題だから、自分の人間関係を広げて、いろいろな名札をつけるしかないのだろう。「●●氏の恋人」とか「●●サークルの一員」とか。
今私が欲しいのは「●●社の社員」なのだ。


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