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ニコニコ動画衰退の歴史

かつて動画投稿サイトと言えばYouTubeよりニコニコ動画
そんな時代がありました。

元々はYouTubeの動画がそのままニコニコ動画に投稿されるだけでしたが、いつの間にかニコニコ動画独自のコンテンツが生まれました。
みっくみくにしてやんよ、ドナルド、ビリー・へリントン、改造マリオ、BadApple、各種MAD。
何故ニコニコ動画は流行り、衰退したのか?
話は少し遡ります。

ニコニコ動画は2006年にドワンゴ株式会社によって始まりました。
ニコニコ動画には他の動画サイトにはないある機能が斬新なおかげで利用者数が増えました。

「ニコニコといえばやはりコメントだよな!」
「弾幕流れるだけで楽しいよな」

そう、ニコニコの最大の特徴は動画とともにコメントが流れることです。
YouTubeは動画全体への感想が主体ですが、ニコニコでは動画の特定のシーンのコメントを見れるし書けるから面白い。
そのため面白いシーンが出るごとにコメントが書かれます。
コメントが面白いから見てしまう動画もあり、1人だとつまらなくてもコメントで突っ込みが入ることで面白くなる動画も多いです。
ニコニコ動画はコメントによって投稿者と視聴者が一体になって面白くなる斬新なコンテンツでした。

他にもニコニコ動画の良さは動画の探しやすさでした。
YouTubeはホーム画面はAlが今までに観た動画を分析しておすすめを表示するため似た動画になりがちです。
しかしニコニコ動画はそんなことはありませんでした。
何故ならランキング機能があるためです。
ジャンルごとにランキングされているから新しい動画を発掘でき、投稿者としてもランキングに載るとモチベーションが上がるしいい機能でした。

さらにニコニコ動画の特色としてMAD動画が流行っていました。
2022年時点では約57万のMAD動画が存在していました。

「フタエノキワミ、アッーwww」
「馬鹿野郎松田誰を撃ってる!?ふざけるなあああwwww」
ニコニコが登場した頃は動画のジャンルが細かく分けられておらずみんな同じ動画を見ていました。
そのため視聴者間のみで通じるスラングが常識になりみんなのネタが自然に共有されました。

キーボードクラッシャーやおっくせんまんなどはニコニコでは常識でした。
このように一体感があって盛り上がれるのがニコニコ動画の良いところでした。

コメントによって視聴者が動画を面白くすることができ、ランキングにより面白い動画を見つけやすい、MADやネット用語で盛り上がる独特の文化。
きっと第二のYouTubeになれる、と思う人も、いや、一時期はそうなっていたと言っても過言ではありませんでした。

しかし…

「ニコニコつまらなくなったし見るのやめるわ」
「はっきり言ってYouTubeの下位互換だよな」
ニコニコにはあれほど強みがあったのにユーザーが離れてしまったのです。

実はニコニコのプレミアム会員数は2016年の250万人をピークに右肩下がりが続いています。
ニコニコのデイリーアクティブユーザーは2022年3月時点で200万人ですが、一方YouTubeは6000万人超えです。
なぜこんなに差がついてしまったのでしょうか?

ニコニコの凋落はさまざまな要因が積み重なって起きました。
まずサービスの質が良くないことです。
ニコニコには月額550円を払うことでなれるプレミアム会員があります。
プレミアム会員になると広告がなくなる、高画質で見られる、バックグラウンド再生ができるなどの特典を受けられます。

しかし高画質機能はYouTubeならタダで使えます。

高画質機能はサービス開始当初は珍しい機能でした。
ニコニコは2010年ごろまでの画質は360ピクセル、それ以降は480ピクセル。
2018年になって1080ピクセルで観られるようになりました。

順当に進化してると思うかもしれませんが、Youtubeでは2009年から1080ピクセルでの視聴を実現していました。
こんなに時間がかかったのは資金不足もありますが、何より資金のかけ方に問題がありました。

ドワンゴはサーバー設備よりもイベント会場の工事に投資していました。
そうしてできたのがニコファーレでした。
ライトとCGを駆使したライブができる施設ですが、ニコファーレは六本木のクラブ跡地を改造したため12億円もかかったのです。

しかもユーザーは105万円の使用料を払わなければいけませんでした。
ドワンゴも途中からニコニコユーザーによる使用料を無料としましたが、オープンから1年後には空室が頻発し、2019年にニコファーレは幕を閉じました。
結果、サーバーを強化するお金は無駄に消えてしまいました。

それにニコニコ動画には足りない物がまだあります。
それはスマホアプリです。
スマホ版アプリはあるのですが、スマホ版アプリ使いづらいしYouTubeでいいという人が増えました。

なによりYouTubeアプリはスマホに元々入っていることも多いです。
ドワンゴはスマホの存在を軽視していたのです。
それに加えエンジニアまで軽視しています。
そのためアプリの出来が悪く、主要ユーザーとなりうる中高生をうまく取り込むことが出来ませんでした。

今のニコニコは10代の人が1割もいないという惨状です。
そこでドワンゴも手を打ちました。
「ニンテンドー3DSでニコニコ動画を見れるようにしよう!」

しかし…

「3DSでみてますw」
「3DSからきましたww」
「なんだよ、コメントがつまらねえ!3DSで見てるとかそういう報告いらねえよ!」

3DS版ニコニコ動画が出た頃からコメントがつまらなくなったと感じるユーザーも多くいます。
3DSで取り込めたユーザーは中高生というより小学生でした。
ちなみに3DS版ニコニコ動画は2023年3月31日に終了しました。

上層部は何を考えているのでしょうか?
実は、上層部はニコニコに興味がないのに運営をしています。

ニコニコで人気だった機能を消したり、役に立たない機能を実装したりとユーザーを無視しています。

ニコニコ動画の川上会長はニコファーレの建設についてこんな発言をしています。

「ちっちゃなライブハウス200人しか入らないのに12億円ってどう考えてもかけすぎなんですよね。
どんだけシミュレーションをしても絶対にペイしないという計算結果が出まして、これは行こう!(笑)というのが、ニコファーレを作ったときの
我々の気分だったんです。」

つまり、ノリで大金を無駄にしたわけです。
エンジニアに3日でニコニコ動画を作らせたり、焼きそばを焼かせたり、技術者軽視や無茶振りが目立つ人物でもあります。

他にもユーザーを底辺と見下した発言をして辞任しています。
しかしこの程度の理由でニコニコが衰退するとは思えない、と思った方もいるかもしれません。

これまで語ったのは序の口です。
むしろここからがメインです。

ニコニコは動画投稿で収益がもらえるシステムが生まれるのが遅かったのです。
ニコニコでクリエイター奨励プログラムができたのは2012年です。
しかしYouTubeは2008年から収益化出来ました。
そのためにYouTubeに移行してしまう有名実況者も多かったのです。

しかしYouTubeは収益化するにはチャンネル登録者1000人、1年以内の再生時間4000時間が必要ですがニコニコでは誰でも収益化できるという強みがあります。
しかし、誰でも収益化できると聞いてやってくるのは小規模なチャンネルでした。
それ以上にニコニコが欲しい大手のチャンネルは
YouTubeに移動してしまいました。

小さなチャンネルでも面白ければランキング上位に食い込んで逆転できると思うかもしれません。
しかし2014年に事件が起きました。

角川との経営統合です。
角川はコンテンツとITの融合企業として、世界に類のないサービスを発信していくと謳いドワンゴと合併しました。
これによりニコニコは角川の人気コンテンツを発信する場になってしまいました。
ランキングは角川が配信するアニメが上位を占め、面白い動画を発掘しにくくなったのです。

他にもゲームカテゴリーでもマリオメーカー問題が起きました。
ニコニコは任天堂が収益化を許可したゲームをクリエイター奨励プログラムで定めています。
2015年にスーパーマリオメーカーが発売され、任天堂がクリエーター奨励プログラムとして認めるとゲーム実況者はこぞってマリオメーカーを実況し始めました。

結果ランキングの上位をマリオメーカーが独占してしまいました。
その後もマリオカート8やスプラトゥーンでも同様の現象が発生しています。

その後マリオメーカーの動画に荒らしコメントが多発して動画が減ったことで事態は収まりました。

実況者もルール通りに配信しており何も悪くないのですが、荒らしにより収束したのです。

そして2017年以降には人気のゲーム実況者たちはファンを抱えてYouTubeへ移行してしまいました。

2014年以前のランキングは視聴者が面白いと思っていいねしたり、マイリストに入れた動画が入ってました。
実況者はランキングに入れるようにより楽しい動画を作る。
しなし、角川が見せたいアニメや任天堂が売りたいゲームの動画ばかりがランキング入りするようになりました。
そしてニコニコのランキングはみんなの広場というより企業の広告会場へ変わってしまったのです。

需要のあるはずの動画が埋もれて需要の比較的高くない動画ばかりが供給されるようになってしまいました。
それに加え運営はこの問題を放置し、ニコニコの魅力であるはずのコメント機能が実況者をニコニコから追い出すために使われる状況を見過ごしていました。

ウリのコメントが人を傷つける手段として使われていたのを無視したのです。
こうして人気実況者がニコニコから出て行ってしまったことがニコニコ衰退の大きな理由の一つです。

実況者のファンはニコニコを使う理由がなくなり、それに新規ユーザーが来なくなる…
こうして動画投稿者にとってもニコニコ動画は魅力的でなくなり離れていったのです。

他にもニコニコが衰退した理由は2018年まではアカウントを作らないと動画を見れなかった事も大きいです。

しかもニコニコ生放送の配信者もプレミアム会員にならないと30分までしかライブ配信が出来ませんでした。
著作権の規制が強くなりMAD動画の投稿数が減ったことも大きいでしょう。

それに無料アカウントは動画を100本までしか投稿できません。

自分からコンテンツを減らしているのです。

有料のニコニコプレミアム会員より無料のYoutubeが優れており、投稿者は収益化が認められるのが遅く、動画のジャンルに偏りが出たことによりユーザーは離れたのです。

しかし最近は良いニュースもあります。
ドワンゴは17年度に10億6700万円の赤字に転落しました。
18年度はさらに25億7600万円の赤字です。
ただ、19年度はコロナ禍により27億8800万円の黒字に回復しました。

その後もコロナブーストに陰りが見えるも20年度は20億9600万円、21年度は20億1300万円、22年度は16億4100万円と黒字でした。
他にもニコニコである投稿者が2年間YouTubeに投稿しても収益は0だったのにニコニコでは50万円稼いだというツイートをして話題になりました。

その人はYouTubeでは1.3万回再生だったのにニコニコでは14万回再生されたそうです。

それでもプレミアム会員数は下がるばかりで2022年には全盛期の250万人を遥かに下回る136万人と発表されました。
またドワンゴジェイピーnewsは2023年6月30日をもってサービスの提供を終了しました。
他にもブラウザゲームを提供するニコニコアプリを2023年9月27日をもって終了すると発表しました。
2024年6月8日にはサイバーテロ攻撃に遭い、株価は下がり続けています。
ドワンゴの未来は明るいのでしょうか…

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