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ブシロード版モンコレを振り返る~ブロック1~

さてここからブシロード版モンコレについて語りたいと思います。前回の記事ではGレギュレーションの特徴として、

① 強すぎる◎能力
② 強すぎるイニシアチブ対抗
③ 強すぎる死亡や破棄


の3つを紹介しました。
これがブシロード版ではどう変わったのか。

①に関して、即死ダメージや対抗打ち消しのような効果はほぼなくなりました。あったとしても普通タイミング限定だったり、コストの支払いが困難だったりなどの調整が加えられています。ブシロード版の◎能力は、攻撃力や防御力アップといったものが主流です。

②に関して、ブシロード版からイニシアチブ対抗が廃止されました。同時攻撃が起きたら甘んじて受け入れないといけません。また同時攻撃が起きると戦闘スペルや特殊能力は使えないため、攻撃力と防御力の高さ(基礎値)のみが重要になります。そのため過去のレギュレーションよりも同時攻撃が発生しやすくなっており、ユニットの基礎値はこれまで以上に重要視されるようになりました。

③に関して、破棄効果は廃止され、代わりに無属性ダメージが導入されました。防御力が低くても属性ダメージを防ぐ手段は豊富ですが、無属性ダメージを防ぐ手段は防御力を上げるしかありません。

つまりブシロード版モンコレは、戦闘スペルや特殊能力だけでなく、攻撃力や防御力の値でも駆け引きができるように改良されたのです。デック構築の段階でも、

「6点ダメージが出る戦闘スペルが環境で流行ってるから、防御力7のユニットは価値が高い」

「流行しているリリス、ラルヴァ、ピンクウィッチのパーティがラルヴァ能力込みで総防御力14になるから、こちらも総攻撃力14以上が出せるデック構築をしよう」

といった想定がなされるわけです。僕はブシロード版のように理詰めでデック構築の答えを導くのが好きでした。だからこそブシロード版モンコレの再発売によってあの時の楽しさをもう一度味わえたらなと思って、この文章を書いているわけです。

以上の点を踏まえた上で、ブシロード版モンコレについて振り返っていきたいと思います。まずは記念すべきブロック1ですね。2011年8月6日に2つのスターターが発売されました。

『剣姫』

『水龍』

じゃなかった・・・

『火竜』

ですね。まあ『火竜』に収録されていたカードのいくつかはナーガラジャデックに採用されてましたから、事実上スターター『水龍』です

当時の環境トップは剣姫デックです。自軍パーティ対象で魔剣を装備しているユニットにイニシアチブ+3という1つ目の能力が凶悪で、パーティのユニット3体に魔剣を装備させたらイニシアチブ+9になります。相手はまず先攻が取れません。そこから2つ目の能力で相手パーティに大ダメージを与えます。魔剣姫ドラジェはカード単体でも完成された強さを持っていましたが、さらにこのデックには凶悪な相棒がいたのです。

長靴を履いた猫フリスキー

ハイ来ました◎能力!
ドラジェの相棒フリスキーですね。(アイテム枠があるので)魔剣を装備できて、特殊能力でメインのドラジェをサポートします。◎能力なのでコストさえ払えれば1ターンに何度でも。相手が防御力を上げてきたら、こちらも◎能力でドラジェの攻撃力を上げればいいのです。前回の投稿ではGレギュレーションの強すぎる◎能力について話をしましたが、ブシロード版になっても多少マイルドにはなりましたが◎能力は強いままだったのです。

ブロック1の環境はドラジェとフリスキーの2枚が定義していました。スターター『剣姫』だけでは強いデックとは言えませんが、2011年8月27日発売のブースター『アルフレアの不死鳥』で多数の強化カードが登場し、完成度の高いドラジェデックが環境を制圧したのです。このデックは他と比べて一戦闘における対抗数がかなり多いので、一度盤面と手札が充実してしまえばまず負けません。事実、多くの地区大会でこのデックが優勝していました。

銘刀「紅まぐろ」

このカード自体の強さは普通ですが、味方の攻撃力を何回も上げるフリスキーがいるせいで凶悪カードの仲間入りに。

このドラジェデックの特徴は、

①圧倒的なイニシアチブで約束された先攻
②理想パーティの完成で約束された相手本陣陥落
③デック内のユニット全てが進軍範囲歩行
④アイテムへの対抗が苦手
⑤ドラジェとフリスキーが英雄

でして、①はメリットしかありません。なぜなら戦闘スペルや特殊能力が使えなくなる同時攻撃が発生しないからです。ドラジェ側は理想パーティを作るのに、ドラジェ、フリスキー、別の2レベルユニット1体、魔剣3枚の計6枚を揃える必要があります。同時攻撃でその理想パーティが壊滅するとリカバリーが非常に困難で、事実上敗北となってしまいます。しかしイニシアチブ+9を出されると、こちらがイニシアチブ0だと同時攻撃が起こる可能性はゼロです。

補足すると、モンコレでは戦闘時の先攻後攻は1~6のダイスを振って決めます。出目の大きい方が先攻で、同じ値の場合は強制的に同時攻撃となります。この出目の数値を上下させるのがイニシアチブです。+の値が大きいと先攻を取りやすくなります。こちらがダイス目で6、ドラジェ側が1を出してもイニシアチブ+9の補正があった場合、ダイス結果は1+9=10となりドラジェ側の先攻が確定します。そこから特殊能力と戦闘スペルを連打されるゲームが始まるのです。

②はデメリットでもあり、序盤に理想パーティが完成しないと負け試合濃厚になります。モンコレはターンの始めと終わりに手札調整フェイズがあり、不要な手札を捨てて手札上限枚数(基本は6枚)まで引くことができます。そのため他のTCGと比べて山札を掘り進めてキーカードを引くのは容易です。しかしモンコレには山札サーチがない(過去に1枚だけありました。申し訳ありません)ので、理想パーティが完成しても山札がほとんど残っていないケースも多く見受けられました。

(追記 : モンコレ最初期のAレギュレーションにコボルト宝石発掘団というユニットがいて、特殊能力で山札からアイテムカードをサーチできるとのこと。有識者の方からご指摘を受けたので追記しました)

③はデメリットになります。モンコレは進軍と戦闘を繰り返して相手本陣陥落を目指すゲームです。そのため各ユニットの評価は、戦闘能力だけでなく進軍範囲も重要な要素になります。モンコレの進軍範囲は大きく分けて歩行と飛行の2種類に分類されます。歩行ユニットは前後左右にしか進軍できませんが、飛行ユニットはそれプラス斜め四方向にも進軍可能です。詳しい説明は省略しますが、飛行ユニットを活かした進軍は、歩行ユニット中心のドラジェデックに有効な戦術です。

④について。他のTCGで魔法カードに相当するのがモンコレでは戦闘スペルとアイテムになります。ユニットが持っているスペル枠、あるいはアイテム枠を消費して手札の戦闘スペルやアイテムカードを使用できます。

キャッツ・アイ

ドラジェデックには強力な専用スペル、キャッツアイがあります。相手が使用した戦闘スペル、または特殊能力を対抗(カウンター)で打ち消します。アイテムを打ち消すことはできません。このデックは戦闘スペル中心のデックには対抗しやすいですが、アイテム中心のデックには対抗手段が薄いです。

最後に⑤。英雄とはステータスに王冠マークがついたユニットです。強力なユニットですが場に1枚しか召喚できません。ドラジェもフリスキーも英雄なため、ドラジェで相手本陣を攻めてドラジェで自軍本陣を守る、これを同時に行うことはできません。対策する側が目指すプランは2つあります。1つはドラジェを本陣に閉じ込めてこちらの負けをなくすこと。もう1つはドラジェが本陣から出てきた瞬間に相手本陣を攻めて勝利すること、この2つです。

このようにドラジェデックは非常に完成度の高いデックですが、対策も容易にできたのです。それでもドラジェ側が序盤に理想パーティを完成させてしまうと、対策してる側も準備不足で勝つのは非常に難しいです。アルフレアの不死鳥までのカードプールでドラジェに対抗できるデックとして認知されていたのが、冒頭で紹介したナーガラジャを中心とした水土アイテムデックです。

龍皇子ナーガラジャ

モンコレTCGトッププレイヤーの一人にしてブロック1の全国大会で4位になった男、BURGER(バーガー)さんが愛用していたので「僕の周りでは」バーガラジャと呼ばれていたカードです。


やはりこのカードも◎能力を持っています。ドラジェデックが先攻を取ってくるので、1つ目の能力は発動しやすいです。また2つ目の◎能力は手札コストなしで使用できるが強力です。この能力でドラジェの攻めを防ぎつつ、ドラジェが苦手なアイテム対抗を撃つこともできます。

また対ドラジェのメタカードとして認識されていたのが、

マテリアル・ブレイク

というカードで、装備品(魔剣)を装備したユニットに20点ダメージ(事実上即死)をスペル枠1個で飛ばすことができます。ナーガラジャデックもこのカードを無理なく採用できて、なおかつ火竜デックなど他のデックに対してもバランスよく戦えたので環境No.2の座に君臨していました。

またドラジェ対策として人気のあったユニットがこちら。

ベヒモス

死亡効果や破棄効果がどこからでも飛んできたGレギュレーションでは、7~8レベルの大型ユニットの採用率は多くありませんでした。しかしブロック1では大型ユニット、ベヒモスに注目が集まりました。魔剣ブラッドソード(攻撃力+2)を装備したドラジェ(攻撃力5)の特殊能力7点ダメージを受けても防御力8のベヒモスは死亡しません。フリスキーでドラジェの攻撃力を10に上げてきたら、土枠からレジストを撃って属性ダメージを無効化します。先ほどのマテリアル・ブレイクも撃てますね。ならばとドラジェ側が攻撃を選択したらベヒモスの*枠から戦闘スペルを撃ったり、素直に特殊能力を使用したりしてドラジェ側の消耗を誘います。

といった、特殊能力のダメージと防御力を巡る駆け引きはブロック1からありました。またドラジェミラーを想定して、ドラジェデックにベヒモスやマテリアル・ブレイクを採用する人もいました。

こうしてドラジェを中心に環境が形成されていたわけなんですが、2011年11月5日に発売されたブースター『ソラステルの堕天使』の発売によって様々なデックが環境に現れました。全国大会決勝トーナメントを優勝したハーピィは、飛行進軍の優位性が光ります。ドラジェやナーガラジャなど、ブロック1は歩行デックが中心でした。『ソラステルの堕天使』の発売後もドラジェデックは高い評価を得ていましたが、全国大会ではハーピィデックを持ち込んだ人が多かったらしく、環境トップの座が入れ替わった瞬間でした。

雷鳴の舞姫ライカ

ハーピィデックの中心。即時召喚可能なユニットが多いデックなので、前線にユニットを投入しやすいのも長所。 また対抗不可3点を飛ばせる戦闘スペル、ゲヘナ・フレアーを撃てるので、先攻さえ取れば問答無用でフリスキーを倒すことができます。

ハーピィ・ソング

パーティの総攻撃力を6~8点上げる専用スペル。この環境におけるパーティの総防御力の平均は7~9点なのでかなり強いです。

全国2位だったのは、後攻を取りつつ強力な専用アイテムを撃てるヒッポスデック。これまで語ってきたドラジェデックは全国3位でした。

鈍獣王ドドンパス

ヒッポスデックの王様。守りが得意な水の戦闘スペルとドラジェに対しても強いアイテムを駆使して戦います。

ヒッポスの泥団子

ヒッポス専用アイテム。防御力+10はかなり破格の強さです。

また当時誰も注目していなかったにも関わらず、全国大会予選スイスドローをトップ通過したタウラスデック。アイテムだけを使いこなすデックなのでドラジェに対して強いです。モンコレトッププレイヤーの1人で斬新なデックを多数開発したグリさんが使用していました。グリさんは決勝トーナメントではナーガラジャを使用して全国5位でした。

またエルフデックは各ユニットの基礎値と特殊能力が少し弱かったため、あまり人気ではありませんでした。しかしハーピィに対して有効なカードが多く、アイテムとマテリアル・ブレイクでドラジェにもメタを張れるデックなので一考の価値はあったと思います。

ちなみに筆者ハリーは、ブロック1の全国大会地方予選に参加しました。確か仙台だったと思います。初参加の地方予選で火土ドラゴンのデックを使いましたが全然勝てなかったのを覚えています。ドラジェやナーガラジャに対して効果が薄いカードファイアストリームを3枚積んでました(笑)

冒頭で「理詰めでデック構築の答えを~」 とか偉そうに書きましたが、当時の僕はモンコレについて何もわかってなかったですね。

というわけで『ソラステルの堕天使』までのカードプールを振り返りました。ドラジェ1強と言われ続けていましたが、実は非常にバランスが取れた環境だったと思います。このカードプールでもう一度全国大会を行ったらどのデックが優勝するのか、想像するだけで興味がわいてきます。タウラスデックが全国を制覇する未来があるのかもしれません。

ジャッジメント?
アイドル・マイスター?

そんなユニットいましたっけ?

というわけで次回に続きます!