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金融教育の目的(先生向け)

金融教育の目的は、金融リテラシーを向上させること?

この記事ではこの考え方に、疑問を投げかけたいと思っています。
金融リテラシーの向上は確かに大切なことではあるけれど、それだけを目的にしてしまうと、おそらくその目的は達せられないからです。

おそらく金融教育に興味のある多くの先生は、どうすれば生徒の金融リテラシーが向上するのかを試行錯誤して、授業をしているところだと思います。
しかし、どんなに先生が努力をしたところで、ほとんどの授業が意味をなさないことになってしまっては悲しいですよね。

日本で行われている英語の教育を考えてみてください。
義務教育で日本人全員が英語を学んでいるのに、ほとんどの人が高校に進学し英語を勉強しているのに、半数の人が大学受験を突破し英語を勉強しているのに、英語を話すことのできる日本人はごく少数です。

金融教育をすることで、この英語のような状況になってしまったら、金融教育の目的が果たされているとは言えません。日本の英語教育のようになってはいけないのです。
英語は一部の人だけがメチャクチャできるようになる一方で、ほとんどの人が使えない。金融教育はメチャクチャできるようになる人はいなくても、全体が一定レベル以上になってほしいということです。

では教科を変えて、数学を学校で学ぶ理由は何でしょうか?数学を身に着けることでしょうか?
一部の特殊な職業に就く人を除いて、数学は大人になってから利用することはありません。私は数学の先生として、毎日数学に触れていますが、数学の先生でない社会人で、毎日微分積分を利用している人はほとんどいないはずです。
だから、数学を学ぶ理由は数学をできるようにすることではない、と考えるのが自然と言えます。

数学教育学の学会で出会った方と話した時に話にあがった内容で、私が強く印象に残った話があります。
「数学の授業は数学を身に着けるためではなく、数学を通じて人格を形成することが目的なんだ。」
という考え方です。「人格を形成する」と言うと、ちょっとおこがましいというか、言い過ぎのような気がしますが、ようは数学ができるようになることが目的ではなく、数学ができるようになることによって身につくもの、例えば思考力を身につけることが目的なんだ、ということです。

数学の話で言うと、授業時においては実際に数学ができるようにならないと、そこから得られるものも身につきませんので、結果的に「数学をできるようにする」という授業をすることになります。
でも大人になって使うことはないから「数学なんて勉強する意味なんてない」みたいな議論が生まれてしまうんですね。

話は戻って、これを金融教育に当てはめてみましょう。

金融教育をする目的は、金融教育を通じて人格を形成することだ!

やはりちょっと言いすぎな気がするので、「人格を形成する」をもう少し具体的にしてみましょう。

金融教育を学ぶことで身につくであろう知識→学べることを羅列してみます。

〇お金は道具であること、使い方によって良くも悪くもなるものであることを知る。
→全ての道具は使い方によって良くも悪くもなる。お金はその1つの例に過ぎないということを学ぶことができる。

〇ライフプランと資金計画を知る。
→人生のどの場面でお金がどれくらい必要なのかを考え、計画的にお金を使うことの必要性を学ぶことができる。

〇投資を知る。投資をすることで起こりうる心の動きを知る。
→お金を働かせることでお金を増やすことができるという考え方を学ぶ。お金を失いそうになった時の心理、お金が得られそうになった時の心理など、人間の心の動きを学ぶことができる。

〇投資を知る。様々な投資対象を知る。
→投資対象となるものの値動きは、世界全体の経済の動きに関わることが多いので、結果として世界に目が向くようになりやすい。

〇アルバイト・サラリーマン以外にも稼ぐ方法があることを知る。
→ストック型のビジネスをすることや、起業するという人生の選択肢を学ぶことができる。副業をするという選択肢を持つことができる。

〇マネタイズという考え方を知る。
→好きなことをマネタイズして生きていくという方法を学べる。世の中に影響を与えるようなことをマネタイズして事業をはじめるという選択肢を持つことができる。稼ぐという感覚が身につく。

〇詐欺・ボッタクリで騙される仕組みを知る。
→知識を得ることで、お金を失いにくくなる。

私のする金融教育の授業の内容と、そこから学べることを羅列してみましたが、学べることは金融リテラシーの向上だけはでなく、多岐にわたります。

これだけのことを学ぶことができるポテンシャルがある金融教育なのに、金融リテラシーの向上だけではもったいないと思います。

金融教育で学べることのまとめ。
〇金融リテラシーの向上
〇働き方・稼ぎ方の選択肢を増やす
〇生き方そのものを考える
〇人の心理・集団の心理を学ぶ
〇詐欺・ボッタクリ等に騙されにくくなる
〇幅広い視野を持てる人になる
〇あわよくば儲けられる可能性を上げる

こんなところでしょうか。

これらを目標に、金融教育は行われると良いと思います!


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