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父の事 その2

前回の続きを書きますね。

※ちょっとヘビーな内容です。

なるべくグロテスクな表現にならないように気を付けますが苦手な方はこの先は読まないでください。


その出来事が起きたのは母が用事で出かけており私が父と留守番をしていた時の事です。

朝10時頃、家の外に出てみると玄関ポーチに直径10cm位の赤黒いシミを見つけました。

そして私の靴がおかしな場所に転がっています。

知らない間に父が散歩に出かけ転んで怪我をして帰って来たのでは?と思い寝室へと急ぎました。


呼びかけても布団を頭までかぶり返事をしないので布団を引きはがすと

見た事の無い赤い水玉柄のパジャマを着た姿の父が横たわっていました。

「どうしたの?」と聞いても「放っておいてほしい」と言う父。

「どこをけがしたの?」と質問する私に「いいからこのままにしておいて」と繰り返すばかりです。


押し問答のようなやり取りをしている間に腹部の水玉柄が暗褐色にどんどん大きく広がっていきます。

そこでようやく出血しているのだと気が付きました。


これはえらい事だと救急車を呼ぼうと思っても頭が真っ白で119が思い出せない。

お世話になって居るご近所のYさんに助けを求めようとしても電話番号が全く出てこない。

散々父には驚かされてきたけど、こんなことは初めてでもう完全にパニックです。


それでも止血だけはしなくちゃと慌ててタオルを取りに走り

出血の酷い腹部にぬるま湯で湿らせたタオルをギュッと押し付けました。

すると父が「痛い!」と言うのです。


その言葉を聞いてブチ切れました。

「あたりまえでしょうが!!自分でやっといて痛いって何?」と父に怒りをぶつけました。


「死にたいから放っておいてほしい」と懇願する父に

「私が(自殺ほう助で)警察に捕まっても死にたいの?」と聞いたら

「うん」と。

それから程なく母が帰宅したので救急車を呼び、Yさんにも連絡してもらいました。

Yさんに警察の聴取が有るだろうからと言われ母が救急車に同乗し

私は家に残り片付けをしました。

掃除をしている間ずっと 父にとって家族って何だろうか?とか 

結局父は一人なんだなとか色々考えているうちに

無力感と怒りと悲しみみたいな感情がごちゃまぜで久しぶりに泣きました。

搬送先の市民病院で父が自分のお腹と胸を数か所刺し、

首も数か所切り付けていた事が分かりました。

奇跡的に腸に損傷が無く、お腹と首は傷口を縫うだけで済みましたが

胸の傷が思ったより深く心臓の膜に血だまりが出来たので

これからその手術の為に信州大学病院へ搬送するとの事。

あと1㎜深くナイフが刺さって居たら心臓に直接傷がついて命が危なかったとも担当医から説明が有りました。


一通りの処置を済ませ「やっちゃったよ。ごめんね」と何事もなかったように明るく謝る父に

「助けないわけにはいかないし、お父さんには苦しくても寿命まで生きて欲しいよ」と話しました。

躁状態から鬱状態への変わり目には気を付けなさいと前から精神科の先生から言われていたけれどこれ程の事をしてしまうとは。

その後父が若い頃から定期的に自殺を試みていた事を知りました。

新婚当初も姉や私が小さかった頃も死に場所を探しにあちこち出かけていたみたい。

いくら家族でもその人本人の悩みは計り知れないし、その衝動はとても抑える事が出来ないんだな。

長野に移住し、そろそろパートでも始めようかなんて

毎日能天気に過ごしていた母と私の日常が崩れた長い日でした。


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