シスターという纏足

 初期の山田詠美が結構好きで、その頃の作品はほぼ全て読んでるのだが、『蝶々の纏足』のほかは、クラブで出会って寝ちゃってから恋が始まるとか、いわばワンナイトラヴ的な話が多い。でも、描写がこなれてて、痛みと美意識が伝わる文章なのだ。恋愛小説として。

そして、初期の山田詠美のように、基地の外国人兵士と付き合う人たち、当時横須賀ガール(この形容は私が知っているより少し前の表現で、普通に横須賀のお嬢さん的な意味を示す時代もあったらしい)とか、悪意のある言い方だがぶら下がり族(身体の大きな外国人兵士の腕にぶら下がるようにして街を歩くことから)とか言われてた女性たちと、実際知り合いになったこともあった。通ってた北鎌倉の画塾に来ていた近所のOLさんだったが、実は育ちが良いのにそんな恋愛をしてるのが不思議だった。

その画塾の先生がフランクな人で、生徒たちは悩み相談とかしながら絵を描いてたり。彼女が帰ったあとに、先生が、彼女は基地の外人さんが好きでね、しょっちゅうふられたり捨てられたり任務終わって国に帰ってしまったりでまた失恋したー、って泣きにくるんだけど、二週間もすると新しい男見つけてる、って。申し訳ないが美貌の持ち主ではなく太ってて、でもきっといい人過ぎてなんだな、と話を聞いてぼんやり思った。今時の人みたいにブランドで飾り立てたりしないが、家で父親がいつも焼酎飲んでるちょっと欠けた湯のみが実は本物の魯山人だった、とか、一度見せに持ってきてくれたことがあったり。

物資や金銭では満たされない何かを補うみたいにしょっちゅう外国人兵士にくっついてるみたいだった。尽くしてお金貢いで捨てられて、また次の男見つけて元気になっての繰り返し。学力がめちゃくちゃあるわけでも、底辺高にいたわけでもなく。そうした恋愛に夢中になれる彼女が、本当は少し羨ましかった。

京大の方らしいが、こんな論文があった。「境界に生きる日本人女性たち :米軍基地をめぐるつきあいのかたち」宮西香穂里https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/177213/1/ctz_2_052.pdf



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