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収戦道 (改編) Part 8 立禅 ・ 揺(ゆり)・ 這(はい)


収戦道では、立禅・揺(ゆり)・這(はい)を鍛錬法として行っています。

立禅について

立禅とは


意義;立禅は膝を少し曲げた状態で立ち続けるので足腰のトレーニングにもなりますし、「禅」と付くだけあって精神修行にもなりますので、一石二鳥です。
方法;具体的なやり方は、以下の通りです。
1. 両足を肩幅に開き、平行にして立つ。足指でしっかり床を掴みます。
2. 重心を両足の「親指」と「親指の付け根」に置きます。
3. 両足首を内側に軽くしめるようにします。(重要)
4. 骨盤を直立させ、背筋を真っ直ぐにするとイメージします。
5. 顎の下に気のボールを挟んでいるとイメージします。
6. 両手を肩と心臓の間に置き、手の平と胸の間は30cm程開け、両手指の間も30cm程開けます。
7. 肩の力を抜き、両肘の間に棒を一本入れるとイメージし、その棒の両端を両肘で軽く押さえるとイメージします。手首の下角(したかど)と上角(うえかど)でもの引っ掛けるように操作します。(口伝あり)
8. 目付けは、前方遠くを見ようにします。
9. 体全体で「上下」の力を感じるようにします。(重要)(口伝あり)
10. 胸の中央部にある壇中(というツボ)辺りの力を抜きます。
11. 両膝前に丸太が一本横たわっているとイメージします。
12. 後ろ腰のところに壁があるとイメージします。
13. 両掌にある労宮というツボを臍下丹田に向けます。(重要)
14. 踵と床の間に新聞紙一枚分の隙間を開けます。(重要)
15. 臍下丹田に意識を置きます。
16. 両腕で大きな気のボールを抱えているとイメージします。
17. 呼吸は自然呼吸です。

参考動画:



立禅の効果

・足腰の遅筋とインナーマッスルが鍛えられる
・体軸がしっかりしてくる
・バランスの改善
・全身の協調
・運動神経や反射神経の向上
・速筋を使う神経が刺激され、動きが素早くなる
・リラックスの体得
・内臓の位置の正常化
・身体の内側に対する鋭敏な感覚
・気感を得る

揺(ゆり)について

揺とは


立禅から、ゆっくりと糸を繰るように腕を伸ばしたり、縮めたります。 立禅を継続すると身体中にバネのような弾力や波を受けたような抵抗感があらわれます。 それらの感覚は微妙なもので、むやみに動くとすぐに消えてしまいます。この抵抗感を利用して全身の筋肉、関節、神経と意識が統合された状態を維持しつつ動く為の稽古が「揺(ゆり)」です。
 
この稽古は“静″から“動″へと移行していくものです。すなわち静をもって“気″を養成し、動をもって“気″を発揮するのです。
 
立禅が終わったら硬直した精神と肉体をほぐしてやらねばなりません。この動作を“揺(ゆり)″と呼んでいます。この“揺″の動作は、手の形、技術などの正確なやり方よりも、立禅の延長として考え、気分を大切にして行います。

◆注意点◆
 
立禅を長く組んだ後に、ゆっくりと両手を下げると同時に膝を伸ばし、更にゆっくりと気分をととのえる動作を行います。
 
禅を組めば身も心も自然に静に戻ります。しかし、禅が終ってすぐに飛んだり跳ねたりしたのでは何にもなりません。禅の気分を大切にしながら静から動へと移行していくことが肝要です。揺はこの意味において動への先がけとなる最初の動作ですから、特に気分を入れて大事に行う必要があります。
 
揺の気分は、大きな木を自分の方へゆっくり引きつけるような、そして押し返すような感じです。手の形ばかりにとらわれているとどこか不自然な揺になります。
 
揺はあくまでも立禅の一環としてあるので、立禅が自然に揺の動作に移行したと思えばよいのであり、別々に考えて動くと何の役にもならないです。揺は立禅の延長なのです。

揺のやり方


◆動作◆
 
立禅から手を静かに下げながら、足を伸ばして自然体で立つ。
 
立禅から離れて揺の動作に移る時は静かに元に戻します。物を引きつけるように手を動かします。
 
あまり意識的に腰を落したりしないで、できるだけゆつくり行います。引きつけた手を前方へ力を入れずに、ゆっくり押し出します。
 
以上の動作を10回繰り返します。

参考動画:



揺の効果

 
立禅が終わったら硬直した精神と肉体をほぐす効果があります。
 
この“揺″の動作は手の形、技術などの正確なやり方よりも、立禅の延長として考え、気分を大切にして行います。

這(はい)について

這とは

地面を這うようにゆっくりと歩きます。足が地面につくかつかないかのギリギリのところで、ゆっくと歩みます。氣血を巡らせます。

立禅で得られた身体の中心を崩さないように行います。足腰は、粘る力・・・手は、触覚としての力を養います。

正確な足運びを学ぶための練習法です。ゆっくりすすむ、その姿がまるで地を這っているかのような動きであるためにその名が付きました。しかし、力んでいたら血は巡りません。あくまでもリラックスを心がけましょう。

「這」を行う

立禅の姿勢よりわずかに腰を落とし、爪先に重心をのせます。
このとき、腰だけ落ちて上体が立っていてはいけません。背はわずかに丸みを帯び、脛骨は背骨の延長のような感じにします。眼は正面でなく、5~10メートル先の地面を見るようにし、手の平は、眼から額の高さに上げ、進行方向に向けます。肘をわずかに外に張り、両手首と両肘の4点で眼の前にあたかも網を張っているようなイメージを持ちます。

重心を左足に十分にかけ、ゆっくりと右足を上げます。右45度に右足を向けると同時に腰も同様に捻れます。
  
右足を引き上げたときに、自分の頭で脚をブラ下げている感じが持てればよしとします。約一足から一足半程度前に右足をおろしますが、このとき足を地面につけてもすぐに重心を移しません。ちょうど、そこにある地面が本物かどうかを確かめるような感じです。

そして、徐々に重心を前足に移してゆきます。この力は、膝を位置エネルギーで前に押し出していく要領です。

重心が移るに伴い、肩はやや右に捻れますが、それがあまり極端にならないように注意します。この重心の移動に伴う身体の捻れは、身体全体の変化に重要な意味を持ってきます。この自然な力をじっくりと味わうべきです。

眼は常に、二本の腕の間に張った網をイメージして(通して)目標を見るようにします。

重心が右足に十分に乗ったら、ゆっくりと左足を引き上げます。このとき、まるで田んぼに足首まで埋まった足を引く抜くような感じで引き上げます。左膝と右膝が前後に重なり、左膝が右膝をすりぬけるようにして、前に出ます。

このとき、足先は引きずらないようにします。足指先の緊張で引き出す各関節の緊張を失わないようにするのです。

左足が前に征くに従い、腰と肩が左に徐々に捻れてゆきます。以下左足に重心を移し、再び右足を引き抜いていくように繰り返して前に進んでゆきます。

次に後退する際の要領を示します。

まず、左足に重心が完全に乗り、右前足は地面をさぐるようにしていくところから始めます。このとき、右膝を前に押し出して往けば、前に進む動作になります。

しかし、後退するするときは違います。右前足が地面をさぐるとき、左足の重心は自然に爪先よりにあります。それを後ろの壁にもたれかかるようにして踵に重心を移してゆきます。そして、ゆっくりと前足を引き上げます。やはり、田んぼから足を引き抜くような要領です。

左膝を右膝がすり抜けるような感じで両脚が引き合い、引き裂き、右足が後ろに往きます。それにつれて、腰、肩はゆっくりと左に捻れます。左足の一足から一足半のところに右足を置き、右足を地面から上げてからここまで足首の角度は徐々にせばめます。

形は変化しますが、爪先で起こった緊張が足首や全体に拡がっている状態は立禅と同様です。

右足が地面に接しても、すぐには重心を移しません。前進のときと同様に右足で地面を確認するようにしてから、ゆっくりと重心を移します。

このとき、左軸足の力の具合はどうでしょうか。まず、爪先を地面に垂直に突き立てるようにし、足首を伸ばそうとします。左膝は膝の前の丸太を押しのけるようにし、その反動で腰を後ろに動かすのです。ちょうど座り込むような動きで、腰の後ろの壁を押しやります。

右足に重心が移り、それが爪先から踵に移りきるまで、左足は地面から離しません。完全に踵に重心が移ってから左足を引き抜きます。このように前進後退をゆっくりと行なってゆきます。

参考動画:這の動画


這(前進)の際のイメージ:


重心は低くします。しかし単に腰を落とすのではなく、足指で地面を掴み、身体を下に引きずりおろすようにします。この感覚がなくなるほど腰を低くする必要はありません。前進の場合は、身体全体で前方からの風圧に対抗するようにし、軸足に十分に重心が移ってから、もう一方の足を引き上げるようにします。また、1本のゴムを前後に引き裂くようにして足を前に運びます。

参考動画:




這(後退)の際のイメージ:


後退するときの歩幅は、前進より多少広くなってもかまいません。全体の感じは、海老が自分の巣穴に入り込むような感じです。もちろん、上下の力は失わないようにします。腰を低くすると苦しいですが、そのとき頭で腰を吊り上げているような感覚が見つけ出せれば、腰の負担は少なくなり、ずっと楽に這うことができます。これがそのまま上下の力へとつながり、相手の力に動じないバランスのとれた身体を作り上げます。

参考動画:



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