見出し画像

高齢者は義務だから雇う!?

新型コロナの対応で日本国中が右往左往していた中、2020年3月31日に改正高年齢者雇用安定法が成立し、2021年4月1日から施行されます。
改正法では70歳までの定年延長や継続雇用年齢の引き上げなどが努力義務として盛り込まれました。

しかし、コロナの影響による消費低迷で、パートアルバイトなどの非正規雇用者とともに高齢者を雇用調整の対象として雇止めをする企業が増えてきそうな気配がします。超高齢化社会の我が国において、高齢者、女性、障害をお持ちの方、外国人など、従来労働市場に参加していなかった方の活躍なしに企業活動は成り立たない、というのが基本的な考え方であったず・・・。それが手の平を返すことになるのは、「背に腹は代えられない」ということなのでしょうか?

「高齢者雇用」について企業の考え方は様々ですが、
〇法律で決められているので仕方なく継続雇用している。
〇人手不足なので、貴重な人材として雇用している。
〇高齢者雇用の重要性は理解しているが、組織の若返りが遅れるので困る。
など、どちらかと言えばネガティブな意見が多いように感じます。そうであれば、雇用調整の矛先が回ってきても不思議ではありません。
高齢者(ここでは60歳以上とします)の雇用に関する問題としてよく言われることは、
① 高齢者にやってもらう仕事がない。
② 高齢者は新しいものに対応する能力が低い。
③ 継続雇用になるとモチベーションが下がる。
④ どのような給与制度が適切なのか分からない。
⑤ 元部下が上司になることの抵抗。
などですが、どの意見も、出来ない理由を並べているだけだと感じます。そもそも「国の年金政策の失敗を企業に押し付けている」という発想に原因があるかもしれません。

高齢者に活躍してもらうために必要なこと


それでは、上の①~⑤について、高齢者活躍の視点で考えてみます。
① 高齢者にやってもらう仕事がない。
経営者や人事が高齢者の仕事を考えてもアイデアはでません。現場では「やらなくてはいけないが、できていない」仕事はたくさんあります。高齢者にそれを任せることができれば、現場の管理職はとても助かります。


② 高齢者は新しいものに対応する能力が低い。
60歳を過ぎると、健康面でも能力面でも個人差が大きくなります。十把一絡げで「高齢者は…」と考えるのは危険です。ポイントは中高年期(45歳以降)も継続的に能力開発、社内研修や自己啓発推進を実行していくことです。中高年になると、管理職になったり、実務が忙しくなり、研修機会がほとんどなくなるのが実情です。


③ 継続雇用になるとモチベーションが下がる。
定年前と同じ仕事をしているのに、給料が大きく下がればモチベーションが下がるのは当たり前。
今まで十分に給料を払ってきたから、60歳以降は(仕事が同じでも)下がって当然、と考える経営者もいらっしゃいますが、立場が入れ替わったら本当にそう思えるでしょうか。
モチベーション維持のために、ある空調機メーカーでは、定年再雇用になるとき最大3カ月の休暇を取得できる制度にしています。従業員は今までまとまった休みを取ったことがないので、最初の1ヶ月は毎日楽しいのですが、だんだんやることがなくなり、3ヶ月経てば仕事がしたくなるそうです。「どんな条件でもいいから、早く働きたいと…」


④ どのような給与制度が適切なのか分からない。
定年再雇用者は。定年前の一律〇〇%などと決めている会社も多くあります。
しかし、高齢者は能力、体力の個人差が大きいため、「仕事基準」の賃金体系・水準が望まれます。1年ごとに更新する契約であれば、仕事内容や責任に応じて毎年、金額を見直すのが合理的だと思います。


⑤ 元部下が上司になることの抵抗。
例えば製造現場などでは、定年後に限らず、年齢の逆転現象は日常的にあります。仕事ができる、できないが一目瞭然だからでしょう。分かりにくいのがホワイトカラーですが、その場合は、お互いが割り切ってやるしかないと思います。
特に高齢者は、元部下に上手く使われるようにならないと、今後仕事がやりにくいことを早く理解することです。

高齢者自身へのアドバイスとして

高齢者自身に働き方をアドバイスするなら、次のことの実践です。
① 職場で仲間から依頼されたことは、断らずにホイホイ引き受ける。
② 新しいことに挑戦し続ける。
③ 気になることが出てきたら、すぐに調べる。
④ 後輩のお手本になる。
⑤ 柔軟に考える。
今後ますます進む、少子高齢化社会において高齢者の活躍なしに企業の存続は難しくなります。
「高齢者を押し付けられている」という発想から早く脱した企業が成長できると思います。

(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構では、高齢者の活躍を推進するため、企業に訪問し無料で相談・助言をするサービスを行っています。例えば、賃金・退職金制度を含む人事管理制度の見直しや職業能力開発の支援などがありますので、ご利用されてはいかがでしょうか。

https://www.jeed.or.jp/elderly/employer/advisary_services.html


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?