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散髪初め

僕の髪の話など、誰も読みたくはないと思うが、時々書きたくなってしまうので、なんの変哲もない男性の髪のことだけれど、書く。

数年前、あの感染症が流行り出した頃に、街じゅうの店を開けるか否かと混乱した時期があった。生活必需品の店は開けて、そうでない店は休業せよ、みたいなことだったと思う。スーパーは開いていたけれど、美容院や床屋は閉じてしまった。

当時、新しく近所にできた床屋さんは、とてもおしゃれで、お客さんを一人しか入れないので、とても落ち着いて髪を切ってもらうことができた。しかし、その店も、感染症の波には勝てず、一時休業という憂き目に遭ったのだった。

よく利用するスーパーの上階に家電量販店が入っていたことが幸いして、軒並み店が閉まる中で、家電を購入することができたので、試しにバリカンを買ってみたのが始まりだった。

自分で髪を切ったことなどなかった。

しかし、中学生の頃に、もみあげを整えたり、前髪を切ったりして、なかなか特徴的な髪型になってしまったこともあった。友人のだれひとりとして覚えていないだろうが、その髪型はスペモンカット(スペシャル・モンチ・カットの略、モンチは当時の渾名)と呼ばれていた。

床屋に行く一回の分の代金で、バリカンを購入することができて、ちょっと意外だった。バリカンはもっと高いものだと思っていたのだ。一回分なら買い物に失敗しても惜しくはない。

バリカンを買ったことがある方なら分かると思うけれど、取説に髪の切り方の説明があり、具体的な毛の長さの数値入りの模式図があって、僕はとても感動してしまった。よく考えれば当たり前のことだが、部位によって長さを変えることで、バランスを取っているのだ。

以来、月一回のペースでセルフカットで散髪をしている。バリカンを使うと、散髪の意味がよく分かる気がする。髪質も影響するのだろうが、とにかく散るのだ。切った毛も短いため揃って落ちることはないし、夏のクーラーの風や冬の乾燥した室内の静電気など、短い毛が流されたりくっついたりする。

季節によって、ミリ単位で髪の長さを調整しているのも、誰にも気がつかれない拘りポイントである。

先ほど、今年に入って、初めてのバリカンによるセルフカットを終えた。回を重ねるごとに、作業時間が短くなって、自分の思うような髪型になりつつある。というか、理想の髪型がよく分からなくなっている気もする。

常に気をつけているのは「あともうちょっと、でやめておく」ことだ。

今回は、バリカンの充電が不十分だったようで、途中で何度か止まってしまった。しかし、なんとか終えた。危なかった・・。もう何十回も使っているのに、充電をするタイミングがいつも掴めない。家族が寝静まって、僕が寝落ちしない、土日の夜に散髪するため、決められないのだ。

妻は、時々は床屋に行くべきでは?とアドバイスをしてくれるのだけれど、この深夜のセルフカットが、実はとても心地良い。今後、髪型で相談したいことが出てきたときや、とんでもない失敗をしたときに床屋に駆け込もうと思う。






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