【読書メモ】自治体人事行政の3モデル

「自治体人事行政の3モデル 学歴、試験、平等」著者 林嶺那を読んだ読書メモです。

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まず内容は、地方自治体の昇任管理にスポットをあてて、採用、研修、配置との連関を分析して、特徴的な3自治体の人事制度と運用を検証、解説したものである。

日本型人事管理の典型ともいえる地方自治体における、昇任管理の仕組みを歴史的に遡って分析してる本は珍しいと思われる。

縦の人事異動の仕組みについて、大阪市、東京都、神奈川県の3つを例に、同じ自治体でも異なる考え方で、人事管理の仕組みが構築されていることを知る上では、非常に参考になった。

3つの自治体の特徴は次の通り。
1大阪市 学歴モデル
○採用の入口選抜から、学歴(大卒、高卒)を基準にして選抜を行っている
◯昇任管理も学歴で異なり、大卒は幹部候補生として扱われ、異動や研修等も差異がある
◯ただし、大卒の中でも昇進スピードが異なるなど、競争性は働いている
◯2001年に学歴区分による採用から転換したこと、また、市政改革が大胆におこなれて以降は、従来の学歴主義による昇任管理とは異なる状況二転換されつつある。

2東京都 試験モデル
◯各階層における昇任試験が設定されており、採用時の学歴に関係なく、昇任試験による選抜が厳格に行われる
◯早期選抜を合格したものは、異動や研修において、幹部候補生の育成として取り扱われる
◯一方、早期選抜に不合格でも、多段階選抜の仕組みにより、設定された職群における専門性を磨くことで昇任の機会はある
◯昇任試験という公平な選考方法により、公平性を担保した人事管理を行っている

3神奈川県 平等モデル
◯採用試験で学歴によるスクリーニングも特になく、昇任試験も大規模に行っているものではない
◯あくまで勤務実績をみて昇任管理を行うこととするため、一定の時期までは横並びの遅い選抜になる
◯学歴と職業能力は異なるという非固定的な能力観に基づいて、横並びの研修、配置、一定時期まで同時昇任を行い、能力評価を行う

少しデータは古いので、現状は変わってる部分もあろうかと思うが、これまでの歴史的経過はわかり、非常に興味深かかった。自治体でも異なる考え方に基づいて人事制度の構築及び運用を行っており、各自治体の規模や取り巻く環境、歴史的経過等に応じて相当異なるのかもしれない。


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