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グレースと伝令者テオリア・しばいぬピュテスの物語「完」

ゆらゆらミルコさん&めぐみティコさんのリレー小説に、有り難いことに巻き込んでいただきました。


それでは、はじめます。

☆☆☆

ハイノン国から遥か南の太平洋に、ハイノン国とおよそ変わらぬ面積の南北に細い島国があった。自然溢れるその島を人々はジューランドーニと呼んでいた。

鳥の楽園とも呼ばれるその島には、飛べない鳥が多数生息し、ハイノン国から移住した民族、コッマ族と呼ばれる忌々しき民族が住んでいた。コッマ族は下品で気性が荒く、頻繁に民族内で紛争を起こすことで有名だった。

そんなジューランドーニの南島にある小さな街、ソンネルにピュテスという女性が住んでいた。夫と3人の子どもとともに、質素だが笑いの絶えない幸せな毎日を過ごしていた。

ある初夏のことだった。
ジューランドーニ国内を分断しかねない大きな対立が起こった。
コテカ(民族衣装の一種・チンケース)が「きのこ型」か「たけのこ型」かをめぐり、人々が争い始めたのだ。

劣勢気味だったきのこ派に、新リーダー・コィテが就任したのをきっかけに、きのこ派が勢力を拡大し始めた。争いはどんどん激しさを増しピュテスの家族にも亀裂を生じさせた。

たけのこ派のピュテスと息子達、きのこ派の夫と娘との間で口論が絶えなくなったのだ。
夫と娘は言葉でピュテスを追い詰めはじめた。矛先はコテカだけにとどまらず、容姿にもおよんだ。
その度にピュテスは「大丈夫。鏡を見ればすむ話だから」そう自分にいいきかせ、なんとか耐えてきた。

そんなある日、ピュテスが日課の火起こしをしていると、燃える火の中から、乳房バンドを角に装着した白い牡鹿が現れた。

「四つん這いになれ」

そう一言残し、白い牡鹿は再び炎の中に消え去った。

残されたピュテスはつぶやいた。
「なんのはなし・・・で鹿?」

四つん這い?
なんの話かさっぱりわからないピュテスは、白い牡鹿の言葉を繰り返しながらその日眠った。

翌朝起きると、枕元には見慣れない帳面があった。
それは文字が浮かんでは消える不思議な帳面だった。読んでみると、不特定多数の人間で綴られた交換日記のようなものだった。

毎晩必死に読んでいると、ピュテスはあるやり取りに心を奪われた。
それは、古都ラーナに住むテオリア、そしてカドゥーホイの街に住むグレースという女性達の決意であった。

歌で世界を救う。

ピュテスは身体から力が湧き上がるのを感じた。そして自らも歌うことを決めたのである。

その決意を表すため、まずは2人に挨拶をしようとペンをとった。

「我が名はピュテス!!
四つん這いで世界を救u」

「にんにくちん・・・」
「レジ袋が・・・」

何度トライしても挨拶文は2人のやり取りにより、即座に上書きされ文字を書き込む隙さえも与えてもらえなかった。
それでもピュテスの決意は確かだった。

「歌うことで、紛争を、家族を救うんだ。」

ピュテスは毎日歌った。

そしてついにピュテスの歌声は大地を震わせ、大気を操り、あらゆる偶蹄類を使役して数多の邪悪を葬り去ることができるようになった。
その凄まじい歌声に民衆は恐れをなし、次第にコテカの多様性を認め合うようになっていった。

こうして、徐々に平和を取り戻したジューランドーニだったが、悲劇はおきた。
なんと、平和を取り戻すという役目を終えたピュテスがしばいぬになってしまったのだ。もちろん、睾丸はなかった。

突然の出来事にピュテスはうろたえた。鳥の島に、四つん這いの生き物が生きることは許されない。
頭に浮かんだのはあの帳面だった。急いで助けを求める言葉を書き下していると、家族がしばいぬになったピュテスに気がついてしまった。家族達はその犬がピュテスだと気がつくはずもなく、股間からコテカをむしり取り、ピュテスをなぶり殺そうとした。

ピュテスは、はじかれるように家の外に飛び出し、導かれるように海へと走った。
すると港に見慣れぬ船が止まっていた。
迷いはなかった。



ピュテスに船に飛び込んだ後の記憶はなかった。
気がついたときには、人間としてジューランドーニに向かう船に乗っていた。



街に戻ったピュテスは裏路地に寿司屋を開いた。

ピュテスの寿司屋は賑わっていた。

店内は3Dプリンターで作られたカラフルなウミウシの置物で彩られ、インスタ映えしそうな店として有名だった。路地裏なのに来店するのは若い女性ばかりで、男性客はいつもたった一人、不思議な帳面を手にした男だけだった。

いつもの時間に店のドアが開き、まつたけ模様のスーツを着たその男性客が入ってきた。
彼はいつもの席に座ると、いつも通り帳面を開いた。なぜかピュテスはその帳面に懐かしさを感じる。
ピュテスが男性の前にお茶を置くと、男性は、ロマンチックな笑顔でお礼を告げ、いつもどおりピュテスに手土産を渡した。

耽美物語ボーイズラブ とグッピーラムネだった。

さっぱり、意味のわからないお土産を受け取り、お礼を告げる。
そっと男性の帳面を覗き込むと、今日も客の女子大生達の乳房バンドルーティンの記録を綴っていた。ピュテスはいつも通り、それを覗き込み、いつも通り間違いを指摘する。
「私がいないとダメね。」

客の絶えない忙しい一日を終えたピュテスは店を閉め、外へ出た。

どこまでも広がる牧場、目の前には無数の羊たち。
ピュテスはガマガエルの形に手を組み、羊にむかってホーミーを始めた。

大地を揺るがすホーミー。
今日もなぜか遠ざかっていく羊たち。
そんな羊たちをいつも通り、四つん這いで追いかけ始めるピュテス。
ピュテスが走ったその後には無数の黄色いパンツが落ちていた。

なんのはなしですか。




☆☆☆

読んでくださった皆さん、貴重なお時間をいただき読んでいただいたのに、意味がわからない内容で申し訳ありませんでした。

ティコさん、ミルコさん、文才溢れるお二人に続くプレッシャー、マジで笑えませんでした。でも楽しかったです!!
書いている私が全然意味がわからなかったのですが、これでよかったでしょうか。反省会よろしくお願いします。

コニシ木の子さん、私の下らない物語に巻き込んでしまい、本当に申し訳ありませんでした。
許してくださると信じております。
見守ってくださり、ありがとうございます。心強かったです。

たつのこ龍次郎さん、ヨッシャマン、コメントのやり取りからアイデアをいただきました!本当に助かりました。ありがとうございます。

蒼広樹さま、「挨拶文を楽しもう」ハッシュタグ、使わせていただき、ありがとうございます。


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