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ひとりぽっちの踊り

3月2日。

心がざわざわして、なんとなく落ち着かない。

雨が降っている。風が時折強く吹く。

昨日の晩、心にポカッと開いてしまった穴のようなものに

風がいったりきたり。

なんだか、寂しい。

切ない。

なんなんだろうなぁ。

子供の頃読んだ絵本のように、すべてがキラキラしていればいいのに、

と思う。

朝の光が眩しくて、おいしいお茶を入れて、大好きな友人をお茶に招待して、料理を作ったり、散歩をしたり。

何気ない日々が、ずっと穏やかに続けばいいのに。

こんなふうに、突然

ひとりぽっちの心が、むっくりと頭をもたげる。

冷たい雨と風が、身に沁みる。

足が重たくなる。

いつまで、どこまでいくのだろう。

どこへいけばいいのだろう。

どこへいけるのだろう。

ずっと、ずっと。

身体の中によこたわる黒い影が、渦を巻いて大きくなっていく。

闇はいつでも、そこにある。

旅の中にいると、そんな孤独を感じる時がふとやってきて、

しばらく思考停止になる。

自分ががむしゃらに歩んできた道をふりかえって、ぼうっとする。

街を歩きながら、なんだかとても切なくなったりする。

ああ、やっぱり、ひとりなのか。

と思いながら、

それでも、歩く。

胸の奥が苦しくなって、喉の奥がくっと詰まって、

そんな時、私は目を閉じて、深呼吸する。

山の奥から吹いてくる風。

田んぼの中を通り抜ける風。

草原に1人、私は立っている。

シンとした空気の中、

雨上がりで少し湿ったもやのなか、

私は右手を上にあげる。

左手がそれについていく。

身体がしなやかにまがり、風になびく一本の草になる。

くるりとまわって、背中に風を感じる。

空をむいて、揺れる一本の草。

私は、空気と戯れている。

私にとって、踊りはそんなものだ。

ダンサーでもないし、振り付けでもなく、

私にとって、踊りは「呼吸」

生きていることが、どうしようもなく、苦しくて

世界が、どうしようもなく、わからなくて

私のなかの黒い渦が、どうしようもなく、悲しい時

血を吹く代わりに、

私は手を、足を、この大地の上に投げ出す。

投げ出すというより、

風が、空気が、見えないものが

ちゃんと、受け止め、返してくれる。

そして、ああ、私は1人じゃないんだと

1人じゃないんだと

わかるのです。


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