「白銀の拳銃」


焼ける様な炎天下
琥珀色にも見える髪を見せ
彼女は殆どの甲冑を脱ぎ
赤黒く爛れている筈の
白く溶けそうな素足に括られた
足枷を引き摺り
歩いていた

見下ろす砂場をただ
歩いていた

時折、黒い貨車の様な何かに
掴まる様に見えたが
見るとやはり
それは幻の様子だ

脚が気になるのか
一度だけうずくま
視線をかえていると
やはり歩いている

彼女の罪は
「自由」と「殺戮」
書面を見ても
彼女を見ても
そうは思わない

拳銃を磨いた

「民を操って殺したり
財を奪う事も可能だそうで、民の一部から
天使は殺すべきだとの事です。」

民の願いは多数だった
街で天使が殺される前に
従って
天使達の殺し合いを
観戦とする許可をしたが


「 」

天使を
処刑人は檻の扉を開き
争闘場へ天使を

「イデア」

目を奪う様な艶やかな甲冑は
多数争闘で、観戦券は
高額

溜め息をついた

最大天使と大天使の
複数での争闘は
処刑として死亡する迄

大天使は微動だにせず
立ちすくみ
最大天使に従っている
確かに、彼女や彼達は
大天使を操り
イデアと記録にある
彼女はひじの刃を撫でるように
何かを決めた

観戦する為に
付き人の拳銃はテーブルのような
書類棚に並べた

ファンファーレが観客の
罵声を控えさせ
天使が躊躇い無く
殺し合いをしている

甲冑から生えている様な翼は
羽を落とさない

僅かだが一瞬
彼達と彼女達は微笑み
目を離していた彼女が
頭部の甲冑を抱き
片膝を地に突いている様に
見えたが

「幻で民を狂わせるだなんて、どうも」

付き人の向こうから
遠くの声が聞こえ

彼女が最大天使と大天使を
殺すのだろうが
崇拝という幻の忠誠は
彼女の形をしている


大天使から血を流しているが
最大天使は歓声に与える為なのか
大天使にも刃を刺させた

最大天使の耳を掠め
争闘場に突き立てる剣を見ていると


風が吹き彼女が刃を
呼吸を止めるように振りかざ

最大天使は一斉に大天使を
切り裂いた

歓声を感傷の様に
鎮め

彼女は最大天使を殺していく

娯楽を失う民から
罵声が聞こえ

彼女は速度を増して
天使達をすべて殺した

「天使が天使に操られては高額観戦としても、
民は不服でしょう。」

彼達、彼女達は
操られているのだろうか

簡易な争闘場の石床は
仕い人により
処刑場の砂利に戻り


彼女の書類には
「天使殺戮の罪」

溜め息を紛らわすと
付き人は彼女の処刑を見るか
一粒
汗を垂らし考えた

焼ける様な炎天下
爛れた脚に冷ます程度の治療をし
彼女は甲冑を着けて

足枷を引き摺り
処刑場に連れられ

書類を見て
蜃気楼の様な
天井を眺めながら
付き人は外させ
拳銃を見た

座らずに這い
頭を抱えない様に
髪を千切り嗚咽して
泣き叫んだが

鳥が鳴き

壁に背をあて
首を向こうに垂らし
白銀の拳銃の引金を引いた

絶望に愛され
絶望に尽くす様に




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