「彼女の街」


私が稀に
とても稀に
塔から出ると
私の塔は消え
貴女と
黄金の階段を
降りました
私の視界は
視界は白く

貴女は必ず
私の前を歩き
時折
一度だけ
階段の施錠を解く様に
触れる狭い空

私の狭い視界に
花や葉を映し
私は貴女の肩に
ひたいをあて
貴女は私が
見たい存在を
見ない様に
私は安堵したように
彼女と階段を
降りました

橋を歩いて
貴女は流れる白銀の様な
水を見て
私は安堵して
貴女の肩に
頬をあてました

貴女は必ず
私の前を歩いて
私が映した
花園の彼達を
視界に映さず
水を見ていました
私も水を
見ていました
彼達の視界を歩き

貴女は手をかざ
煉瓦の壁を映し
彼達は消え
硝子の壁を映し
私は貴女の肩に頬を
置いたまま
貴女が見ている色を
見ない様にしていても
必ず魔法は
見えていたのです

私を休ませる
その様に私は安堵して
暗闇を見て
安堵して
絶望的に
琥珀色を望んでいたのです
私に視線をかえ
私を抱くように
髪を撫で

橋を歩き
階段を歩き
塔にて
いつまでも
立ち
絶望的な琥珀色を眺め
貴女は必ず
私の背後の
漆黒の様な
暗い階段を眺め

貴女の視界には
街を映さない様に
私は深く
苦悩していたのかも
しれません

彼女は深く
彼を愛しているのです

何も映さない街
貴女の視界には
美しく
絶望的な宝石が
並んでいました

貴女と私の視界は
輝く光の様な絶望は
確かに
一致して
私は貴女を
更に愛し
深く信頼し
街を歩いたのです




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