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エッセイからの考察②家族のアルコホリズムの性質

前回の記事『エッセイからの考察①子どもの立場から見た家族のアルコホリズム』の冒頭で、私は以下のように書きました。

「私たち家族もまた、長年あれだけ父の飲酒に悩みながら、とうとう最後まで父とアルコール依存症を結びつけることはありませんでした。これは今の私にとって、自分のことながら非常に理解に苦しむことであります。」

「舌の根の乾かぬうちに」とは正にこのことでありますが、この言葉は私がいかにアルコホリズムの本質を理解していないかを表しています。アラノンの基本テキストである『How Al-Anon Works』の序文はこう始まります。

How Al-Anon Works for Families & Friends of Alcoholics opens wide the door to a remarkable fellowship of courageous men and women who have experienced the sometimes subtle, but nonetheless devastating effects of another's alcoholism.

How Al-Anon Works (2008): Preface

ここでは、他の誰かのアルコホリズムの影響というのは、時にsubtleであり、それにもかかわらずdevastating(壊滅的)であると述べられています。メリアム=ウェブスターのオンライン辞書でsubtleという単語を調べると次のような意味や定義が出てきます。
     ・delicate(繊細な);
     ・elusive(うまく逃げる);
     ・difficult to understand or perceive(理解し難い、気づきにくい);
     ・clever and indirect : disguised in purpose(巧み、間接的:偽装目的);
     ・having or involving keen perception or insight(鋭敏な知覚力や洞察力を持つこと);
     ・highly skillful : expert(非常に熟練した:エキスパート);
     ・cunningly made or contrived : ingenious(巧妙に作られた:工夫に富んでいる);
     ・artful, crafty(狡猾な、ずる賢い);
     ・operating insidiously(知らない間に作用している)

一つの単語にたくさんの意味がありますが、そのどれもが良くも悪くもアルコホリズムを非常にうまく形容していることに驚かされます。家族の場合、周りの人々や状況、あるいは自分自身をコントロールすべく、物事を巧みに偽装するようになります。目的を遂行するためには鋭敏な知覚力と狡猾さが必要であり、その技術は次第に熟練されていきます。私は真実を隠蔽するエキスパートになりました。ただでさえ理解し難く、気づきにくいこの病の前に立ちはだかっていたのは、他でもない、subtleな性質を身につけた私自身だったのです。


参考文献

How Al-Anon Works (2008): Preface
メリアム=ウェブスターのオンライン辞書
https://www.merriam-webster.com/

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