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【特別展】 恐竜図鑑 | 失われた世界の想像/創造

2023年6月12日

恐竜展へ足繁く通い、それなりに化石に対しては造詣はあるのでもちろんこの恐竜図鑑の名を冠して居るこの展示も元々興味があった。
恐竜絵画というのは、考察の元が化石しかない中で研究者が提示してきた情報を極限までに再現する絵画……っていう能書きは置いておいて、このポスターめっちゃいいわwwwっていうので見に行きたくなった。

イケてた頃の俺。

現代の恐竜研究から考えると現在の学説から程遠い表現をした絵画なのだが、恐竜絵画の変遷をこの1枚のポスターとキャプション一言で表現していることに対して脱帽。そして笑いが込み上げてくる。

会場は上野の森美術館、そして主催が産経、フジとなかなかに不信感を煽るオンパレード。
上野の森は会場設営、運営で不安が残るし、産経フジは展示構成、キャプションに対してのレベルが著しく低い。という印象しか無かったので、今回の恐竜絵画という分野に興味はあれど行くか悩んだ。

結果としては、全く上野の森らしくない、産経フジと思えない程の端正な展示替されてて非常に良かった(それもその筈この展示の舵取りはほとんど兵庫県立美術館がとっていたようだ)。

恐竜という古生物に対して、何らかの思い入れがあるならば、恐竜への知識の多寡を問わずしてT-Rexの姿形の変遷というものは聞いたことがあるとおもう。そのような恐竜観の変遷をわかりやすく時系列に沿って紹介してくれる。世間の目から恐竜はどう映っていたのかを伺い知れる展示で良かった。

直立時代の T-Rex

展示は4章に分かれていて、1章では化石の発見から想起された古生物に対してのイマジネーションが先行した時代の絵画、2章では学術的な積み重ねが結実し、想像の域を出なかった絵画が、科学的な視点を手に入れ恐竜絵画として確立するまで、3章は恐竜絵画の日本文化に与えた影響、最後の4章は現代における恐竜絵画の作品の数々を展示しタンバティタニスを例に取り、どのような復元絵画を作成したかを研究者と画家のやり取りを通して見えるようにしていたのが非常に良かった。

この展示の主軸となるのが、イグアノドンだ。
恐竜化石の発見からさまざまな想像の変遷を辿ったこの古生物を比較検討する形で展示がまとまっていて、発見当初想像されていた「四足歩行+鼻の上の角」→「直立二足歩行+親指のスパイク」→現在の鳥盤類の特徴となる前傾の二足歩行となるまでを示しどのように知見が積み重なっていたかを知ることが出来た。
この変遷が面白いのなんの。最初期の頃の描かれ方はまさにでっかいトカゲそのもので、哺乳類的な体を持ったトカゲの皮膚を持つ鈍重そうな見た目で当時の研究の限界を身をもって証明していた。

第一回万博に展示されたイグアノドン


また化石が集まってきたところでの古典的な解釈だと今度はかなり“ゴジラ”的な恐竜の想像図(順番は逆なのだろうが)となっていたのもとてもおもしろくて、ポスターの『イケてる俺。』を思い出してクスリとしてしまう。
そして最後には現代のイグアノドンの姿が……ない!wなんで展示油断したし。見せてほしかったなぁ。
とはいえ、いくらでも現代のは見るチャンスがあるのでまぁいいか。

この展示は絵画に対してのアプローチであるので、割と恐竜の系統などの情報は一切なく、昔からどんな目で彼ら恐竜が人々の目に映っていたのか、またどのような姿を求められていたかが分かればいいのと、その変遷のツボとなるクリエイターの数も絞って展示していたので非常に見やすい上に、恐竜を追っていれば「あっ、昔みたことあるようなきがする!」的な展示も多く取り揃えられているので、絵画そのものは知らなくても雰囲気は必ずどこかの博物館で触れたことがあるはず。

俺、イグアノドン

日本での恐竜観についての展示は田村さんのコレクションが中心となっていたところで、多角さという点ではやや物足りないものでは有ったがそれでも昭和中期~平成前期までの雰囲気や民俗資料を伺い知れるのはかなり貴重、というか普通の恐竜展ではやらないので非常に興味深かった。
島津製作所が恐竜のフィギュア作ってたのは驚いたw

恐竜絵画という、いつも自分が見ている恐竜の化石の展示を支える部分にフォーカスしたこの展示は化石にかまけているなかでも美術の変遷をわかりやすく示していて非常に楽しかった。
今度からは恐竜の復元図の作者にも期を配って見てみよう。。。

以上。