7.遠距離恋愛のスタート
2015年1月26日から、私たちの遠距離恋愛がスタートした。
以前のように、頻繁に会えないのは寂しいけれど、毎晩LINEのビデオ通話で今日あったことをお互い話していた。
新生活。貯金はあるものの、新しい仕事では収入がかなり減ってしまうらしく、節約するため、オーナーが物置として使っていた部屋を無料で貸してもらっていたそう。
しかし、荷物を全て開封するほど、部屋は広くないので、必要最低限のものだけを出して、あとはダンボールに入れたまま。今までの千葉でのゆったりとした暮らしに比べるとだいぶ窮屈な生活だったのではないかなと思う。
「キッチンが狭いのがなぁ。自炊がしづらくてコンビニ飯ばっかりなのが嫌だね。でもまあ、楽しくやってるよ。」
楽しくやっているよと言いつつ、朝早いのに毎晩帰りも遅いし、休みを返上してほぼ無休で働いている様子だったので、私は、ゴウキさんの体調が心配だった。それに1ヶ月以上会えないとそろそろ寂しさが爆発してしまうと思い、2月21日にちょっと遅めのバレンタインデーということで、私が福岡へ遊びに行くことにした。
約1ヶ月ぶりの再会だ。
するとゴウキさんは、「福岡来る前に一緒に大分へ帰省して、両親を紹介するよ」と言ってくれた。
すごい!ドラマや漫画で見たことがあるようなイベント。ついに私もこれを体験するんだ!と、うれしかった。
はじめての大分へ
ゴウキさんが生まれたのは、大分県玖珠郡玖珠町という緑が豊かな場所だ。というか、山の中だ。しかし、到着は夜だったので、景色はほとんど見えず。最寄りの駅まで車で迎えに来てくれたゴウキさんと一緒に、お母さんが営む美容室に行くことになった。
真っ暗な街の中、お店は電気が煌々とついていて明るく、中にはお客さんらしき人が3〜4人いる様子だった。「弟夫婦もあとで来るよ」とのこと。
私はドキドキしながら、美容室のドアをあけた。
「わ!!!」
美容院にいるみんなが一斉に私の顔を見た。そして一同、
「えー!全然 朝青龍じゃないじゃん!!!」と叫んだ。
(え?朝青龍?)
「どういうこと?」とゴウキさんに聞くと、ゴウキさんのお母さんが私の元にやって来て、
「え〜〜〜可愛いじゃない!どこが朝青龍なのよ!?ごうちゃんが婚約者を連れて来るっちゆうて、どんな子なん?ち聞いたら、朝青龍みたいな子やち言うからぁ。。。どんだけ大柄な子が来るのかとおもってたらぁ。全然違うし、ほんとにもぉ〜〜〜。」
私は当時、ペアーズ のプロフィールを2年前の痩せていた写真にしていたことを、詐欺だとからかわれており、そのプロフィールから6キロも体重が増えていたため、ふざけて「朝青龍」とゴウキさんに呼ばれていた。
それをそのままお母さんに伝えていたようで、近所のお友達が、ゴウキさんが東京で出会ったという朝青龍のような婚約者を一目見ようと集まってきてしまったようだ。
「最初にハードルを下げておいた方が、可愛いって言われていいでしょう?」とゴウキさん。
「そんな、女の子に朝青龍なんていうもんじゃないよ。ねぇ〜〜〜」と、お母さん。そばにいたお客さんも、「そーよ、そーよ。」と言ってくれて、みんなすごく親しみやすくて、私はいきなり緊張がほぐれた。
新キャラ登場
「わー!噂のももちゃんだ!」
そう言って現れたのは、ゴウキさんの弟のリュウキくん。双子のようにそっくりだが、双子ではない。3つ違いの兄弟だ。明るくて人懐っこくて、初対面でもすぐに仲良くなってしまうところは二人ともよく似ている。
「全然、朝青龍じゃないじゃん、にーちゃん、それはないよ笑」
やはり、みんな朝青龍を一目見ようと思ってドキドキワクワクしていたらしい。美容院の中は、みんなの笑い声で溢れていた。
挨拶がひと段落すると、映画リングの考察について永遠と語りはじめる二人。ゴウキさんはおしゃべりな方だと思っていたが、それ以上におしゃべり好きなリュウキくん。二人の会話に入る隙がない笑 ヤフオクでゲットした靴の話、近所にできた新しいお店の変わった店員の話、同級生の恋愛事情。次から次へと溢れ出る二人の会話が、井戸端会議をしている主婦に見えた。私はその風景を、おもしろい兄弟だなぁと思いながら眺めていた。
お父さん登場
二人が談笑しているところへ、ゴウキさんのお父さんが突然現れた。
お父様への結婚のご挨拶は、ピシッとした感じで畳に座ってお辞儀するみたいな、そんな光景を思い描いていたのだが、なんとゴウキさんのお父さんはジャージにサンダルという、めちゃくちゃラフな格好で登場してきた。
そして、「おお〜ゴウキでいいんか!?」といきなり言われ、私は思わず、「は、はい!!!ゴウキさん、最高です!よろしくお願いします!!!」という、変な返事をしてしまい、ご両親へのご挨拶はこれにて終了した。
すごい。なんかこれは思っていたのと違う。想定外の挨拶だったけど、ご近所さん含めみんなが優しくて暖かくて、楽しくて、当時流行していた、連続テレビ小説の「あまちゃん」の世界に入り込んだようなそんな気持ちだった。
その後、みんなでご飯に行こう!という時に、リュウキくんの奥さんが最近生まれた赤ちゃん(姪っ子)を連れてやって来たのだが、弟くん夫婦の格好に私は衝撃を受けた。
二人は、完璧なペアルックだった。
(いや、大分みんなキャラ強すぎるよ!!!)心の中でそう思いながらも、弟くん夫婦の様子が、めちゃくちゃオシャレで、私はすごく羨ましい!と思った。
私はそれまでも、ゴウキさんとペアルックにしたい願望があったのだが、ちょっと恥ずかしいかなぁと思ったりして、なかなか言い出せなかった。
しかし、この二人の潔いいまでのペアルックに感動し、感化されて、(あ、ペアルックって、やってもいいんだ、やったらこんなにかっこいいんだ!)という気持ちに切り替わり、その後の私は事あるごとにゴウキさんとお揃いのアイテムを買うようになっていった。
ご近所さんと大宴会
みんなで食べる夜ご飯も、かしこまったお食事会ではなく、近所のお友達がたくさん集まって来て大宴会になった。
「東京からよく来たね〜」「ゴウちゃんの一体どこがいいの?笑」「六本木で働いてるん?はぁ〜〜〜都会やねぇ。」
東京の普段の暮らしや、私の実家では考えられないほど、オープンなご近所づきあいが、私にとってすごく新鮮で、たくさん笑った。
ゴウキさんと結婚するということは、この方々と家族になるってことなんだ。全く知らない土地に住む、今まで知らなかった人たち。でも、突然やってきた私に、みんな優しくしてくれる。
それは、不思議な気持ちだった。
結婚て、二人だけの世界じゃないんだ。結婚て面白いなぁ。そう感じた。
次の日の朝、「また遊びに来てねー」とみんなに見送られて、ゴウキさんの実家を後にした。
福岡で過ごすバレンタインデー
福岡のゴウキさんが住むお家に到着。久しぶりの花火(猫)との再会。しかし、花火の調子が少し変だった。咳をしている。
「この部屋、日当たりが悪いのと、水はけがわるくて、ちょっとカビ臭いんだよね。なんかオレも頭が痛い気がしてて。」
確かに埃っぽいジメジメした部屋だなと思った。
「2月からお給料でるし、引越し考えてもいいかもね。」
そんなことを話しながら、バレンタインデーのプレゼントとして持って来た、ハート形のステーキを焼いて一緒に食べた。
私たちは付き合って一年目まで、毎月1日に付き合い記念○ヶ月をロウソクを立ててお祝いしていた。この月は、2ヶ月分の6・7ヶ月記念をお祝いをした。
そして、組紐でお揃いのアクセサリーを作った。なんだか中学生の恋愛みたいだけど、月に一回。こうやって九州までやって来て二人の時間を大切に過ごすのも悪くないなぁと思った。
ゴウキさんに、「お店がオープンして1ヶ月がたつけど、どう?」何気なく聞いてみると、ゴウキさんの表情が、曇っていった。
「なんか変なんだよね。オーナーも、研修期間は、いろんなところへ連れて行ってくれて、オープンしたらこのお店を任せるよって言ってたんだけど、始まって1ヶ月経って、なんか買出しと皿洗いばっかさせられてる。」
「えー、なにそれ!?」
私は驚いた。
「当初、週2日のお休みの予定だったけど、結局忙しくて無休で働いているし、まぁ、オープンしてすぐだからバタバタしてるのはあるけどね。もう少し様子見てみるかなぁ」
私はちょっと嫌な予感がした。ゴウキさん、ダマサれてしまったのではないだろうか。。
しかし、新しい環境で頑張ろうとしているので、私もひとまず様子をみることにした。
不安な事を相談してくれた。
私はそれが嬉しかった。前はそれすら教えてくれず、一人で全部抱え込んでいたから。ちゃんと相談してくれたら一緒に考えられる。
そう思って、次の日私は東京へ帰っていった。
次回なんと、ゴウキさんの職場がブラックだと発覚編!です。
まだまだ事件は続くのです…!!!
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