アルコール依存症の女 師走の酒

自宅で飲み、居酒屋へ入店する前から既に出来上がっていたけど飽きることなく飲み続けた。
知人との会話ははっきり言ってどうでもよく、ただ酒を飲めればよかった。
隣のテーブルでは男女混合の6人ほどのグループが楽しそうに飲んでいた。
すると、そのグループの1人の男性が立ち上がりグループ全員の写真を撮ろうとした。
「よかったら撮りましょうか」咄嗟に声をかけた。「あぁほんなら撮ってくれる?ありがとう」大柄な体のおじさんは私にスマートフォンを手渡した。

「ハイ、チーズ。もう一回撮りますねー」

おじさんにスマートフォンを返すとご機嫌に礼を言われ、私は再び飲み始めた。
数分後、頼んでいない熱燗が私たちのテーブルに運ばれてきた。
どうやら先ほどのおじさんが写真を撮った礼にご馳走してくれるらしい。
無料で飲める酒ほど美味いものはない。遠慮せず口をつけた。
そのうちに一緒に飲もう、ということになり私たちはグループの輪の中に混ぜてもらった。

おじさんはこの居酒屋の近くでバーを経営しているらしく、今日はそこの常連客と忘年会をしているとのことだった。

「今、従業員足りなくて。よかったらうちでバイトしない?」おじさんの閃きのような誘いに私はやります!と宣言したらしい。酔いが回り記憶にないのだけど。

「じゃあ年明けからお願いね」

2021年も酒で始まり酒で終わった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?