アルコール依存症の女 年初め

2022年は1月4日が仕事始めだった。
正月はもちろん、しこたま酒を飲み酷い胸焼けに襲われた。

「あけましておめでとう」見覚えのない複数の人からメッセージが届いた。誰だろう。
アイコンを見ると、年末に居酒屋で出会った大柄のあのおじさんだった。
飲み過ぎて記憶に残っていないが、あのグループの何人かと連絡先を交換していたらしい。
「アルバイトのことで相談したいから、週末飲みに行かない」
いいですよ、とひとつ返事をしたが正直半信半疑だった。そもそも本業の会社では副業を禁じられていたし、バーということは水商売で通常の飲食店とは異なる。それにおじさんを信用していいのか戸惑った。

週末、仕事を終えて指定された居酒屋へ向かった。店の前でおじさんが待っていた。
カウンターに座り瓶ビールを頼む。
おじさんは元々公務員として働いていたが早期に退職し、個人でいろいろと事業を展開してしているらしかった。
バーはママ的な存在の女性が1人で切り盛りしているが、その女性が出勤できない日に私に来てほしいとのことだった。

居酒屋を出た後、実際にそのバーへ行ったがお世辞にもお店とは言い難いほど散らかっていた。ソファの上に乱雑に物が置かれていたり、本棚に古びた小説や文庫本が並んでいたり。友達のおばあちゃんの家に遊びに来た、そんな感覚に陥った。
カウンターの中にはふくよかだけど、美人で愛想の良いママ風女性が立っていた。
彼女の何か飲む?という問いに遠慮なくいも焼酎ロックを頼んだ。

おじさん、ママ風女性、私の3人で相談した結果、私は水曜、金曜、土曜の夜に出勤することに決まった。

アルコール依存症の人間がバーで働くのは、時限爆弾を持って走っているようなものだ。

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