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筒香は私のベーブルースだ~文春野球学校西澤ゼミに参加しました~


先日、文春野球学校 西澤ゼミに参加してきました。

抗がん剤治療の時、寝転がって携帯を見ていたら、

飛び込んできた西澤さんの「今永投手のお母さんコラム」


読んでいただければわかるんですが、めっちゃ笑えて、最後に泣ける。

こういう文章、私も書きたい!!!!


そして10,11月に西澤ゼミがあると聞いて、すぐに申し込みました。

なによりこのブログを面白く書きたかったんです。


このブログを書いている目的は、

・ガンにかかっちゃった人に少しでも役立つことと

・ガンじゃない人が、自分事としてガンのことをとらえてもらうこと

なんですが、これを伝わる形で書くのはとても難しい。

まずは、読まれる文章を書く必要があったんです。


だから文章を書くプロからお話を聞けるこのゼミはありがたかったです。


そして、ゼミでは課題が出ました。

テーマは野球に関していればなんでもOK。


ここで自分の病気のことを書くのか、結構迷いました。

今の私はパッと見てガン患者には見えないのに
いきなりそういう話をしたら重いんじゃないかとか。

こういう闘病の話って突っ込みにくいから、
講評もしにくいんじゃないかとか。

むしろ、病気をネタにするのは、
文章で勝負をしていないからズルいんじゃないか?


でも、何を書いてもどうもしっくりこないというか

今の私はどうしてもこれを書かなきゃダメだ!!
これ書かなきゃ次のは書けない!と思い、
思い切って書きました。


ブログに載せてもOKとのことだったので
編集者さんからいただいたアドバイスで
少し加筆したものを載せます↓


筒香は私のベーブルースだ


ベーブルースは病気の子供に言いました。
「君のためにホームランを打つ」


スポーツがまるでダメな私にとって野球選手なんて宇宙人のようなもの。

それでも横浜生まれ横浜育ちだったから、

「さえき、大魔神、ローズ」の名前は知っていた。

98年の優勝の熱狂も、うっすら覚えているけれど、
物心ついたころからスポーツニュースではいつも6位。

「今年はクルーンがいる!勝てる!」
FMヨコハマでそう言っていたのに、
いつの間にかクルーンは巨人の選手に…


おらの村の野球チームは、とても弱いんだな。

そう思って野球のことを知らないまま、高校、大学に進み就職をした。


働き始めて8年たった、2016年、会社を辞めることになった。

その時声をかけてきたのは巨人ファンの先輩だった。

「会社辞めてどうすんの?」

「お金ためて、大学通いなおします。
 心理学の勉強して、資格とりたいんです」

「よし送別会だ、横浜出身なら、みんなでハマスタに行こう」


初めて入ったハマスタは、活気があって、みんな楽しそうで、
つつごーという選手の応援歌は前奏があってかっこよくて、
巨人ファンも横浜ファンもみんなで手を伸ばして応援して。


楽しい、また行きたい!
そう思って年に一度か二度スタジアムに通った2017、2018年。
この時は、横浜に住んでいるからベイファン、そのくらいの気持ちだった。


そして、2018年の冬、

「ガンです」

検診に行った病院から呼び出され、告知を受けた。

会社を辞めて2年間、学費を貯めるために働き、
先週、社会人入試を受けた大学から
合格通知をもらったばかりだった。


正直、この時期のことは、

あまり覚えていないけれど、

検査や病院通いの日々の中で、

2018年のFor Realを見た日をよく覚えている。


スクリーンの中で、宇宙人より遠い存在の
プロ野球選手がケガや不振に苦しみもがく姿、


トレードが決まった高城選手が「チャンスですね」
と笑いながら泣くのを見て、涙腺が決壊した。


たぶん、自分の病気のことは、
うまく受け止めきれていなかった。


幸い検査の結果「治療すれば治る」と言われ、
親や友人にも
「どっか痛いとかないし、平気だよー」と言っていた。


でも、
なんでこのタイミングで、とか、なんで私だけ、とか。


声に出せない不満や不安を、
苦悩する選手の姿に重ねてしまっていた。

しんどさや辛さをかかえて、それでも前を向く選手を見て思った、

おらの村の選手が頑張るなら、私も頑張る。


2019年は、ベイスターズと一緒に頑張る。


そして、抗がん剤治療をしながら大学に通う日々が始まった。


大変だったけれど、ベイスターズが勝てば体調は良くなったし

例え負けても
「中井選手がベンチになじんで楽しそうだからもうすべてOK」

「チャピーが与田監督から 撫でられていて可愛いのでOK」と思えた。


これだけメンタルに影響を与えてるんだから
チケット代は医療費控除してほしい。


そして9月4日に手術。

「ちょっと前に宮崎も伊藤光もタナケンも手術したし。

 むしろこの3人とオソロだし」


そう言い聞かせて手術室に入り麻酔で眠って、
後は記憶がないけれど

「はい、無事に終わりましたよー」と
言われたのは覚えている。


酸素マスクを外しに来た看護士さんが、
枕もとにあったホエールズのタオルを見て
「野球中継始まってますね」とテレビをつけてくれた。


ハマスタの阪神戦、
ふつうに負けている試合展開。

「よし、いつも通り!」


でも、3回にチャモさんがHRを打った。

「よし、実質優勝」

でもその後、中井のヒット、ソトのHR
佐野のヒット、HR
そして、最後の筒香のホームラン


それを見て思った。


これ私のための勝利じゃん…


ニワカの私のためにホームランを…

こんなの、病気の子供とホームラン約束するベーブルースじゃん…


お前のためじゃないし、そもそもお前成人してるだろ。


そう思われるかもしれないけれど
数時間前に内蔵切った人間が言うことなので許してほしい。


ヒーローインタビューで筒香キャプテンが言った。

「誰もあきらめていないんで」

ベイスターズは

10連敗も、
一回で7-6の試合も、
15-2という負け方(現地で見てた)をしたときも
諦めなかった。


私が、

抗がん剤できつい時も
彼氏とクソのような別れ方をしたときも
大学で18歳の同級生に
「98年の優勝?生まれてないから知らないっす!」
と笑顔で言われたときも

何とかやってこられたのは、
諦めないで戦ってくれる人たちが
自分の生まれ育った町の名を冠して戦ってくれたから。


おらの村にベイスターズがいてくれて
本当によかった。


翌日、ベイスターズはいつも通り!な感じで阪神に負けていた。
さすが、人生ままならない日もあることを教えてくれる。


試合終了のタイミングで主治医が見回りに来た。
「傷の回復が早いんで、もう明後日退院できそうです」

え?内蔵切ったのに?ベイスターズは傷の回復にも効くの?


そしてその一週間後、私はまたハマスタにいた。

退院の時、ダメもとで
「来週、野球応援行ってもいいですか?」と聞いたら

「ぜんぜんいいですよ!なんなら一杯くらいビール飲んだっていいです」と、お墨付きをもらったので、友人を連れてハマスタに行った。

彼女は野球を見るのが初めてだったので、私はドヤ顔で教えてあげた。

「この筒香って選手はね!応援歌に前奏あって、かっこいいんだよ!」



今後、闘病する方の心のケアなどの仕事につきたいと思っています。 そこで、大学に通いなおして心理学を勉強しています。 こちらでの支援はすべて学費や教科書代にしますので、 ご支援いただけたら幸いです!