いつだって、お姫さまになりたくて
異国情緒のあふれる、そんな風景が大好きだ。
関東に住んでいるので、日帰りで行ける横浜には、何度か訪れたことがあるけれど、神戸の街はまだ3回しか行ったことがない。
初めては、高校の修学旅行のときだった。
京都、大阪、神戸という王道コース。
男女別の班行動だった。仲のいい女友達とわいわいと神戸の街を散策するのもきっと楽しかっただろう。だけど私は、どうしても大好きな人と一緒に、神戸の街を歩きたかった。
その人との関係は、友達だった。
「好き」と勇気を出せば、きっと叶った恋。
周囲の人たちは、私たちが付き合っていると思っていたし、修学旅行がきっかけでふたりの関係が進展したらいいなって思ってた。
彼の友達と私の友達が付き合っていたこともあり、4人で班を抜け出して行動。
その日は、異人館めぐりだった。
少し前を歩く友達と彼氏の後を、ふたりで他愛のない話をしながら着いていく。
そんな風に隣を歩くことは、日常茶飯事だったけれど、いつもと違う風景が、勇気をくれた。
そっと手を伸ばすと、少しの間、手を繋いでくれた彼。
初めてのことに、胸が熱くなった。
異人館では、4人で貸衣装に着替えて撮影した。
大好きな彼の隣で、ほんのひとときだけ、お姫さまになれた、そんな気分だった。照れくさそうに笑う彼の目にうつるその瞬間だけでも、お姫さまでいたかった。彼の、たったひとりだけの。
いくつになっても、女性には変身願望があるのかもしれない。恋をしているときは、余計に。
2度目に行ったときも、3度目に行ったときも、必ず訪れたのがこの異人館だった。
中華街も、神戸ハーバーランドもいいけれど、神戸の街で懐かしく思い出すのは、やっぱり彼と一緒にめぐった異人館。
甘酸っぱい恋の記憶が、私の神戸の街の記憶。
*フリー画像お借りしています。
こちらの企画に参加しています。
2020.6.10
いつか自分の書いたものを、本にするのが夢です。その夢を叶えるために、サポートを循環したり、大切な人に会いに行く交通費にさせていただきます。